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音楽の「ぶつ切り」に隠された意味ー音楽の魅力

霧島れいか
霧島れいかGetty Images

先述のように、本作は脚本に面白さが集中している作品であり、劇伴音楽自体に魅力はない。音楽自体も、フリー素材から引っ張ってきたようなお粗末なものだ。とはいえ、「何を流すか」ではなく、「どう流すか」に問いを切り変えたとき、見方は一段と深まる。

結論から言えば、ギターのインストゥルメンタルやメロドラマ調のピアノのスコアなど、さまざまな曲調の音楽が流れるが、それらが、桑田が婚約指輪を指から外す瞬間、宮田が桑田の乗ったタクシーのドアを閉める瞬間、そして、神田を追ってきたヤクザがトイレのドアをノックする瞬間にぶつ切りにされるのだ。

こういった「ぶつ切り」は、音楽だけではなく、映像的な演出にも見られる。例えば、宮田と桑田が自転車で夜の車道を二人乗りで横断しようとすると、軽トラに轢かれそうになり、ドライバーに怒号を浴びせられる。また、宮田をタクシーで送り出した後、タクシーを走って追い、電話番号を交換しようといきなりタクシーの前に飛び出す。

では、こういった「ぶつ切り」演出には、どういった意味が隠されているのか。それは、ジャンル映画からの逸脱と考えられるだろう。つまり、メロドラマやヤクザ映画といったジャンルに囚われそうになると、ドラマを「ぶつ切り」にし、ジャンルからの逃走を図るのだ。

音楽の「ぶつ切り」。そこには、本作がどのジャンルにもとらわれない唯一無二の作品であることの理由が隠されているのかもしれない。

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