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役者陣の怪演
初監督・滝本憲吾の手腕はいかに…

©︎2023「笑いのカイブツ」製作委員会
©︎2023笑いのカイブツ製作委員会

ジョーク交じりに自身を憑依型俳優と称した岡山。それは、実際のツチヤタカユキ氏がどういう人物なのかも分からないにも関わらず、スクリーンに映された人物は間違いなくツチヤそのものだと感じてしまうほどだ。

しかしながら、滝本の“新人監督”としての詰めの甘さも感じる。ツチヤのお笑いにかける情熱や、そのために半狂乱にもなる演出ばかりが強調され過ぎており、ツチヤがどれだけ作家として有能であったかの描写が少なく、ややもすれば、単なる独りよがりな人物に思えてしまう。岡山のみならず、仲野や菅田、松本といった“キャスト頼み”の側面も伺え、彼らの演技力あっての作品だった印象を受ける。

作中、ツチヤは東京・大阪間を2往復するのだが、そのシーンが東京なのか大阪なのか、道路標識と車のナンバーだけで表現する手法は、少々強引さも感じる。反面、仲野演じる西寺と水木(板橋駿谷)の「ベーコンズ」の漫才シーンは息ピッタリで、本作の見せ場となった。ちなみに、西寺のモデルは「オードリー」の若林正恭だそうだ。

その答えはエンドロールにあった。「漫才指導」の欄に記されていたのは、M-1新王者の「令和ロマン」だった。当然、撮影はM-1前に行われていたにしても、そのネタの切れ味もさることながら、お笑い評論にも造詣が深いこのコンビが関わったことで、さらに作品に厚みが出たといえるだろう。

現在、ツチヤ氏は大阪を拠点に、創作落語や吉本新喜劇の作家として活動しているという。まだ35歳の若さであることから、まだまだ活躍の場は広がっていきそうだ。さらに本作は、全国のハガキ職人に“夢”を与えたという面でも大きな意義があった作品でもあるのだ。

(文・寺島武志)

【作品情報】

2023年/日本/116分/G/5.1ch/アメリカンビスタ
監督:滝本憲吾
原作:ツチヤタカユキ「笑いのカイブツ」(文春文庫)
企画・製作・プロデュース:アニモプロデュース
企画協力:文藝春秋
(C)2023「笑いのカイブツ」製作委員会
公式サイト

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