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松村北斗の演技はなぜ心を揺さぶるのか? “嘘のない芝居”の魅力とは? 映画『夜明けのすべて』徹底考察&評価

text by 柚月裕実

映画『夜明けのすべて』が公開中だ。W主演を務めるのは松村北斗(SixTONES)と上白石萌音。NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』での共演も記憶に新しい二人が届けるのは、ごく普通の日常にある人の体温や心を感じる物語。本稿ではパニック障害を抱える山添孝俊役を演じる松村にフォーカスしてみたい。(文・柚月裕実)

【著者プロフィール:柚月裕実】
エンタメ分野の編集/ライター。音楽メディア、エンタメ誌等で執筆中。コラムやレビュー、インタビュー取材をメインにライターと編集を行ったり来たり。SMAPをきっかけにアイドルを応援すること四半世紀超。コンサートをはじめ舞台、ドラマ、映画、バラエティ、ラジオ、YouTube…365日ウォッチしています。

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©︎瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
©︎瀬尾まいこ2024夜明けのすべて製作委員会

物語の舞台は栗田科学という小さな会社。ここで働くのが上白石演じる藤沢美紗と松村が演じる山添孝俊だ。必要最低限の言葉しか交わさない同僚だが、次第に互いの抱える“生きづらさ”に気づく。

無愛想でとっつきにくい雰囲気の山添だが、実は人知れずパニック障害を抱えている。一方の藤沢も、PMS(月経前症候群)に悩まされ、自分で感情をコントロールできずに周囲からフォローしてもらう度に自信を失う。

それぞれが抱える“生きづらさ”を大っぴらにすることはないが、互いが小さなきっかけを拾い、さりげなく手を差し伸べる。大きな事件は起こらないし、熱い友情物語でも恋愛物語でもない。映画のテーマとしては少々大人しく思えるかもしれないが、ごく普通の日常がベースだからこそ、主人公をはじめ様々な立場からも気づきをもらえる。

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