異人としての座頭市ー配役の魅力
見比べてみればわかるように、勝新太郎演じる市とビートたけし演じる市は、似て非なるものだ。
勝版は、坊主頭にボロを纏ったいかにも放浪者然とした風体で、作品世界に完全に溶け込んでいる。一方、北野版の座頭市は、時代劇にはミスマッチな金髪に小綺麗な身なりで、完全に作品世界から浮いてしまっている。そんな市が新基地の家でじっと座っている様子は、まるで時代劇に迷い込んだ宇宙人のようにすら感じられる。
また、本作では、ガダルカナル・タカや大家由祐子、岸辺一徳といったいつもの「北野組」の役者たちに混じって、大衆演劇界の若手スターたちが出演している点も見どころだ。
特に芸者姉妹の妹(弟)のおせいを演じるのは、大衆演劇集団の橘菊五郎劇団の3代目座長を演じる橘大五郎。女形として若くして注目を集める橘は、本作でも妖艶な日舞を披露している。
また、おせいの幼少期を演じるのは、「流し目王子」の名で親しまれる早乙女太一だ。早乙女は、もともと本作の企画を務めた斎藤の秘蔵っ子で、斎藤とたけしが勝の墓参りに訪れた際に斎藤が早乙女を紹介し、起用が決まったという。