スタイリッシュな殺陣と「下駄ップ」ー映像の魅力
本作の最大のポイントといえば、やはり市の殺陣を挙げなければならない。浅草芸人時代、師匠である深見千三郎から殺陣を学んでいたという北野。彼の殺陣は、どこか様式美を感じさせる勝新太郎の殺陣とは異なり、スピーディかつ無機質で、CGで描写された鮮血の生々しさも相まってどこか「殺戮マシーン」の様相を呈している。
また、刀を抜いた瞬間に隣の侍の腕を斬ってしまう、天井に刺さった刀が落ちてきて下にいる侍を直撃するなど、随所に細かなアイデアが溢れている。なお、こういった創意工夫にあふれた描写は、本家・勝新太郎版にも散見されるものだ。
そして、本作といえば、ラストの「下駄ップ」に触れないわけにはいかないだろう。「村祭り」という体で、生き残った村人たちが全員参加するこのシーンは、「悪いヤツは全員いなくなった」という村人たちの喜びを示す大団円というにふさわしいシーンになっており、鈴木慶一のクールな楽曲も相まって、つい心が躍ってしまうシーンに仕上がっている。
なお、このシーンでメインダンサーを務めるのは、日本を代表するタップダンサーチームのSTRiPES(ストライプス)。特にセンターを張るHideboHは、北野のタップダンスの師匠としても知られている。