ミュージカルとしての座頭市ー音楽の魅力
本作の音楽を担当したのは、ロックバンド・ムーンライダースのリーダーとして知られる鈴木慶一だ。鈴木は、従来の時代劇の枠にとらわれない本作にふさわしく、インダストリアルノイズを多用した純和風でありながら現代音楽風のスコアを提供。本作の作品世界の構築に一役買っている。
本作のスコアで印象的なのは、作中の効果音がBGMがそのまま鈴木のスコアと見事にシンクロしていることだ。例えば、北野が農道で虫送りの行列とすれ違う冒頭のシーンで流れる「A road to a post-town」では、ザク、ザク、という農民の鍬の音が、不安を掻き立てるような曲調に見事にシンクロしている。
また、雨がそぼ降る中、芸者姉妹が扇屋の様子を見に外出するシーンで流れる「The Wasteland Massacre」では、木琴のリズミカルな音楽と雨垂れの音がシンクロし、そこにさらに農民たちがタップする音が加わる。
そして、銀蔵一家が壊滅し、村人たちが祭りに向けて舞台を作るシーンで流れる「Constructors」では、ストリングスのリフレインに、木槌で釘を打つ音やカンナで柱を削る音が見事にマッチしている。こういった演出は、ラストの村祭りも含め、本作全体が時代劇風のミュージカルであることを如実にしてしていると言えるだろう。
なお、鈴木は、本作以降、『アウトレイジ』シリーズ(2010年〜2017年)や『龍三と七人の子分たち』(2015年)などの音楽を担当。久石譲に代わり、後期北野映画の作品世界に多大な影響をもたらしていく。
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