御年90歳・草笛光子の存在感が凄い
つい、エンジンが加速して辛辣なことを綴ってしまったが、本作にも掛け値なしで素晴らしいポイントがある。
それは、矢口千春役の御大・草笛光子(御年90歳)の、存在感である。
千春は「世界最高のガンスミス」であったが、晩年はひっそりと時計店を営んでいる。その設定自体も、非常に胸が高鳴るものなのだが、いかにも劇画的なキャラクターに見事に血を通わせてみせた、草笛の演技力にすっかり心を掴まれてしまった。
特に拳銃の修理依頼に来た次元に対し「噂ほどの男じゃなかったようだ」と、突き放す際の表情は、まさに熟練のキャリアが成せる業。さすがの次元もタジタジになってしまうこのシーンは、本作随一の名場面である。
さらに、オトに接する際の、実の孫、いや、曾孫を目の前にしたかのような、聖母のような優しい眼差しを見ると、日本が誇る、大女優ここにあり! と言いたくなる。
草笛光子を見ていると「矢口千春を主役にし、そこに訪れた凄腕のガンマンが実は次元大介だった」といったな物語の方が、面白くないか? などと、ついつい妄想してしまう。
いささか辛辣なレビューになってしまったが、ぜひ各自の目でご覧になって、本作の魅力を見つけてみてほしい。
(文・ZAKKY)