ホーム » 投稿 » 海外映画 » 劇場公開作品 » 謎多き映画『イニシェリン島の精霊』の細部を考察。一体なぜ主人公は親友から絶縁宣言を受けたのか? 現地メディアの声を紹介 » Page 5

エンディングが意味するものとは?

この映画では、アイルランド内戦に関する情報が断片的に散りばめられており、ライフルや大砲の音が遠くから聞こえてくることもあり、島の民にとってそれは世間話のネタになる。

序盤でパドリックは「何のために戦っているのかさえわからない」と発言する。このセリフは、マクドナー監督がパドリックとコルムの確執に、アイルランド内戦を重ねているのではと、観る者に感じさせる。

また、映画のラストシーンでは、パドリックが家を焼き払った後、コルムと海岸で出会う。コルムは、「戦争は終わりに近づいていると思う。海の向こうでも。自分と親友の間でも。もう戦いはやめようと思っている」と告げる。パドリックは怒りに燃え「まだ終わってはいない」と言い、コルムに視線を送りながら、「前に進めないこともあるんだ」と言う。

ラストシーンには、丘の上からその2人を見守るマコーミック夫人の姿がある。黒マントの彼女の存在は、コルムとパドリックの間に視覚的な溝を作っており、それは彼ら2人の“友情の死”をどうやら意味しているようだ。

パドリックの愛する人たちを全て失い、コルムの家と大事な親友を失うという、世界で起きている戦争と同じように、何のために戦っているのかさえ忘れてしまった2人の受けたダメージは大きく、もう引き返すことはできない。

最後のシーンで、島のビーチから本土を見つめる2人は、争いが起きる前と起きた後で、異なったことを考えているのかもしれない。

【関連記事】
映画『イニシェリン島の精霊』は面白い? 忖度なしガチレビュー【あらすじ 考察 解説】
アカデミー賞史上最も評価の高い作品は? 米最大の映画サイトIMDbが選ぶアカデミー賞「作品賞」受賞作トップ10【前編】
第95回アカデミー賞ノミネート作品が発表!『トップガン マーヴェリック』『アバター2』を抑えてトップに躍り出た作品は?

1 2 3 4 5
error: Content is protected !!