逃れられない父の影
詳細は省くが、セルゲイは、とある形で父殺しを成し遂げると共に、弟と対立する。その後、実家に向かい、今度は父の手紙を読む。父親が毛皮付きのジャケットを遺したことをセルゲイは知り、それを着用する。カメラは、ライオンの剥製がなくなっていることを映し出す。そして椅子に座ったセルゲイは、鏡に映る自分を見つめてこの映画は幕を閉じる。
椅子に座る姿は、『ゴッドファーザー』(1972~)シリーズなども思い起こさせるが、セルゲイが鏡の中に囚われているようにも見える。このラスト・シーンは何を意味するだろうか。父の権威性が今後も影響を与え続けること。
暴力を用いて敵を打倒してきたセルゲイが、結局は父と変わらない存在であること。父が象徴していた有害な男らしさに反発しても、そうしたものから逃れられないことなど、さまざまな解釈が可能だろう。クレイヴン・ザ・ハンターが誕生した瞬間、観客は男らしさと自己をめぐる問いを突きつけられるのだ。
(文・島晃一)
【作品情報】
『クレイヴン・ザ・ハンター』
原題:Kraven The Hunter
12月13日(金)日米同時公開
US公開日:12月13日
監督:J・C・チャンダー
脚本:アート・マーカム&マット・ホロウェイ、リチャード・ウェンク
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン、アリアナ・デボーズ、フレッド・ヘッキンジャー、アレッサンドロ・ニヴォラ、クリストファー・アボット、ラッセル・クロウ
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