衝撃的なラストの裏にある秘密とは〜脚本の魅力
本作といえば、なにより言及しなければいけないのがあの衝撃的なラストだろう。フィンチャーによれば、本作には以下の3つのエンディングが考えられたという。
①サマセットがジョン・ドウを射殺する
②ミルズがジョン・ドウを射殺した後そのままエンドロールが流れる
③ミルズが護送され、サマセットがヘミングウェイの引用を話す
このうち①は映画会社側の希望で、「憤怒」の罪からミルズを救済する狙いがあったが、ミルズ役のピットが却下したため見送られることとなった。また、②の案はフィンチャー自身の希望だったが、テスト試写ではあまりに唐突なラストに批判が続出。この案も見送られることとなった。
そういうわけで本作では③が採用されたわけだが、プロデューサーのアーノルド・コペルソンは一貫してこのラストシーンに反対し続け、エンディングを平和的なものに変えようと画策していたという。
なお、本作の脚本家のウォーカーは、執筆当時、映画業界での活躍を夢見ながらニューヨークのタワーレコードで働いていたのは有名な話。タチの悪い客に頭を抱えた彼は、ミルトンの『失楽園』やダンテの『神曲』を読み漁り、積もり積もった鬱憤を脚本にぶつけた。
そして、この脚本が『エイリアン3』で興行的に大失敗し失意の内にあったフィンチャーを再び映画へと駆り立てることになる。一人の男の鬱屈した思いが、怨念でハリウッドを動かしたのである。