随所に淡い緑色を強調した意味〜映像の魅力
本作で最も印象的な映像は、タイトルデザイナーのカイル・クーパーによるオープニングとエンディングのタイトルバックだろう。電光掲示板のように揺れる文字と露光する画面、そして、遺体の写真や犯罪の記録を矢継ぎ早に見せる演出は、サイコサスペンスの定番の園主として、映画やドラマ、CMなどさまざまな媒体でコスられまくっている。
また、本作の印象を決定づける「銀残し」にも触れておきたい。「銀残し」とは、フィルムの現像時に本来は取り除くはずの銀をそのまま残す手法で、コントラストが強く彩度が低い、くすんだ映像表現が可能になる。本作では、この手法が全編にわたって使用されることで、陰影を際立たせるとともに、退廃的ながらスタイリッシュなニューヨークの情景が表現されている。
加えて、捜査官が用いるゴム手袋や図書館のライトや街頭で配られる割引クーポン券、そしてPCの画面上の文字に至るまで、随所に淡い緑色が配色されている点にも注目したい。
この色の意味についてフィンチャーは明示していないが、欧州では緑色は古来より「嫉妬」を意味する言葉とされてきた(シェイクスピアの『オセロ』では、「嫉妬」が「緑色の目をした怪物」に准えられている)。ラストシーンで、ジョン・ドウが「嫉妬」の罪を犯したことを自ら告白していることを考えれば、この「緑色」は、本作の裏テーマが「嫉妬」であることを表しているのかもしれない。