女性にとって社会進出とは
かつて一斉を風靡したエリザベス・スパークル(デミ・ムーア)。全盛期の輝きは失ったもののフィットネスの看板番組を持つほど需要はあると自負していた。しかし、50歳を迎えた日、年齢を理由に番組を下されてしまう。失職したことで自分の老いを嫌というほど意識させられた彼女は、怪しげなクローン技術に手を出して、若い自分(マーガレット・クアリー)を作る。しかし、若い自分の社会的成功を目の当たりにするたびに、憎悪を抱き始めるのだ……。
女性の老いや美に対する執着や嫉妬をテーマにした映画は珍しくない。古くは『サンセット大通り』(1950)に始まり、『永遠に美しく…』(1992)や『ルームメイト』(1992)、『マレーナ』(2000)など、時を超えて描かれてきた。だが、『サブスタンス』以上に近代社会における女性の苦悩を可視化した作品はないだろう。
60年代に始まったウーマンリブから、女性の権利や自由が認められて社会進出が当然の社会になった。だが、それは本当に女性が望んだ社会だったのだろうか。男性視点で形成された現代社会を生きる「産む性」の嘆きを耳にするたびに、女性にとっての社会進出の意味や意義を考えずにはいられない。
キャリア構築と結婚出産を並行するのは難しく、その苦労ばかりが語られる中でチャイルドフリーという生き方を選択する女性は増加傾向にある。その一方で、年齢を重ねた女性に対する社会全体の風当たりは強くなるばかりだ。