多様な世界で投げかける「生きるヒント」

映画『サブスタンス』
(c)The Match Factory

 脚本/監督のコラリー・ファルジャは「ある年齢に達したら価値がなくなるなんて、くだらない考えは全くナンセンス。2024年になってまで、こんなにくだらないことが続いているとは。本作は、『それを吹っ飛ばす時が来た』と宣言している」と話している。

 だが、監督がどういう感情に裏打ちされて物語を紡いでいたとしても、本作の受け取り方は観客の背景によって異なるだろう。筆者は「ナンセンスを吹っ飛ばす」にはあまり共感できなかった。しかし、ラストではある種の爽快感を得られたのは間違いない。深いメッセージも表面的なメッセージも受け取ったと思う。

 多様な生き方が肯定される今、答えがないからこそ苦しんでいる人が増えている。『サブスタンス』は、そんな世界に生きる私たちに向けて何かしらのヒントを投げつけてくる。それは暴力的であり、決して綺麗な描かれ方ではない。だが、恐れることなく見てほしい。その衝撃は、きっと忘れることはできないだろう。

【中川真知子プロフィール】
 映画xテクノロジーライター。アメリカにて映画学を学んだのち、ハリウッドのキッズ向けパペットアニメーション制作スタジオにてインターンシップを経験。帰国後は字幕制作会社で字幕編集や、アニメーションスタジオで3D制作進行に従事し、オーストラリアのVFXスタジオ「Animal Logic」にてプロダクションアシスタントとして働く。2007年よりライターとして活動開始。「日経クロステック」にて連載「映画×TECH〜映画とテックの交差点〜」、「Japan In-depth」にて連載「中川真知子のシネマ進行」を持つ。「ギズモードジャパン」「リアルサウンド」などに映画関連記事を寄稿。

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【了】

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