実話×音楽の珠玉の映画作品とは? 現在公開中の映画『デュオ 1/2のピアニスト』を筆頭に、注目の音楽作品をセレクト

text by 編集部

実在するフランスの双子の天才ピアニストの苦難と葛藤と成功の物語を描いた映画『デュオ 1/2のピアニスト』が、絶賛上映中だ。今回は、そんな実際のアーティストたちや、その家族を題材にした映画をピックアップ。その魅力を紐解いていく。(文・編集部)

実話の物語×極上の音楽が奏でる心震えるハーモニ

© 2024 / JERICO - ONE WORLD FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 3 CINEMA
© 2024 / JERICO – ONE WORLD FILMS – STUDIOCANAL – FRANCE 3 CINEMA

 音楽にまつわる、事実に基づいた映画は、これまで数多くつくられてきた。近年でも日本でも大きな話題となった、イギリスのロックバンド・クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーの生涯を描いた『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)。更に、世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンの自伝的映画『ロケットマン』(2019)など、世界的スターとなった彼らの生き様や、苦悩、そして葛藤がありありと描かれ人々を惹き付けた。

 しかし、実話×音楽の映画は、こういった世界で人気を博すアーティストを題材にしたものだけではない。日本ではあまり知られていないアーティストたちを題材にした映画にも、唯一無二の物語がつづられている。それぞれの世界で悩みや挫折を経験しながらも、それぞれが思い描く夢や希望を“音楽”に乗せて、大きな一歩を踏み出したアーティストたち。その姿は、音楽に限らず、様々な“夢”を持ち、それに向かって歩んでいる人々の支えとなり、寄り添うような作品になっている。

『デュオ 1/2のピアニスト』 (2月28日(金)公開)

 日本でも来演経験のある、実在するフランスの双子の天才ピアニスト・プレネ姉妹の人生をモデルに、アカデミー賞作品賞受賞作『コーダ あいのうた』(2021)や『エール!』(2014)をプロデュースしたフィリップ・ルスレによる感動ドラマ。

 幼いころから厳しい父親指導の元でピアノの練習に励み、ドイツの名門音楽院に入学を果たすこととなった双子の姉妹クレールとジャンヌ。一緒に切磋琢磨してきた2人を待っていたのは、ソリストというたった1つの椅子を賭けての練習の日々だった……。だが、そんな厳しい練習に明け暮れる日々の中、クレールとジャンヌは、共に両手が徐々に不自由になっていく難病にかかっていることを知る。

 家族一丸となって歩んできた音楽の道をあきらめざる負えなくなった2人は、改めて自らの人生を見詰めなおし、絶対に叶えたい夢を2人で掴み取るため、家族に支えられながら、自らの運命を変えていくための一歩を踏み出していく――。

 美しくも圧倒的なクラシックの旋律と共に、すれ違い葛藤しながらも、自らの手で“希望”を見出し、歩んでいく2人とその家族の姿に是非注目をしてほしい。

『クレッシェンド 音楽の架け橋』(各種VOD等にて配信中)

 今でも紛争が絶えない、パレスチナとイスラエルに住む若者たちを集めて結成された“和平オーケストラ”。そんな信じがたい、今でも世界各国でツアーを行っている実在する楽団をモデルに、彼らの対立と葛藤、そして友情を描く物語。

 紛争を繰り広げる2つの地域にまたがって募集された、平和を祈るオーケストラ。さまざまな事情や障壁を乗り越えてオーディションに集まったのは、音楽家になる夢を掴もうと応募してきた若者たち。そこには、家族の反対や、軍の検閲も乗り越え、自らの運命を切り開こうと奮闘する姿が映し出されている。
 
 そして、オーケストラの一員として、チャンスをつかんだ20余名によって行われるのは、3週間にも及ぶ強化合宿。敵対する民族として、互いに大きな怒りや憎しみを抱える彼らは、世界的指揮者スポルクの元で共同生活をしながら、互いの音に耳を傾け、自らの経験を語り合うことで…少しずつ心の壁を溶かしていくこととなる――。

 様々な事情を抱えながらも、希望を胸に、音楽という共通言語で一つになろうと奮闘する彼らの姿は、一見の価値あり。

『ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた』(上映中)

 主演ケイシー・アフレックと、ビル・ポーラッド監督のタッグで、アメリカの兄弟デュオ「ドニー&ジョー・エマーソン」の実話をもとに制作された、心揺さぶる物語。

 舞台は、1979年の米ワシントン州の田舎町。兄と共にデュオを組んだドニーは、父が息子たちのために自作したスタジオで数々の楽曲を制作する日々を送っていた。そうして、家族に支えられ、情熱をこれでもかと注ぎ込んで作り上げたアルバム、それが「Dreamin’ Wild」。そんな自信作は、世間から見向きもされずドニーの夢は砕け散ったように思えた。

 しかし、それから30年後。思い描いていた夢とは程遠い人生を送っていたドニーは、コレクターにより発見されたアルバムが再評価され、“埋もれた傑作”として人気を博していることを知ることに……。思いもよらない成功に家族は喜ぶが、ドニーは目を背けてきた過去や感情と向き合うこととなっていく――。

 とうの昔にあきらめたはずの“夢”。家族、兄弟だからこそ抱える苦しみや葛藤、そして見えてくるのはあの頃気が付けなかった深い絆。“夢”に向かえって共に歩む家族の姿にきっと心を打たれる。

 知られざる実話を元に描かれる、音楽と家族のストーリーは、夢を追いかける物語でもあり、それと同時に、夢を追いかける家族や仲間を応援し支える周りの人々の物語でもある。心地いい音楽と共に、より身近な感動のドラマを是非この機会。

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【了】

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