「今年最もロマンチックな映画になるだろう」
タン・ウェイとパク・ヘイルの絶妙な駆け引きが見物
演技に関して言えば、なんといってもタン・ウェイが白眉である。デビュー作となった『ラスト、コーション』では、トニーレオン演じる政府高官を誘惑する女性スパイを熱演し、ヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞受賞にも貢献した彼女だが、本作でも艶やかで力強い眼差しによりへジュンと絶妙な駆け引きを繰り広げている。
なお、チャヌクはタンの起用がたっての願いだったと語っており、ソレが中国人であるという設定もタンの起用を想定したもの。彼の願いが映画史に新たなファム・ファタール像を刻み込んだのである。
また、主人公のへジュンを演じるパク・ヘイルも忘れてはならない。ポン・ジュノの『殺人の追憶』(2003年)では、未解決事件の容疑をかけられる青年役を好演し大きな話題を呼んだヘイルだが、本作では職務熱心で優しく、ユーモア感覚も持ち合わせた刑事役を繊細に演じている。
なお、タン同様にヘイルへのオファーも脚本執筆前に行われており、チャヌクはパク・ヘイルをイメージして当て書きしていったという。
なお、作品に接した海外メディアの反応も肯定的の声が多く、米「バラエティー」誌は「ウィットとメランコリーに満ちた彼の力が絶頂に達したようだ」と講評。さらにインディワイヤーは「このパク・チャヌク監督の探偵映画は今年最もロマンチックな映画になるだろう」と絶賛している。
『パラサイト 半地下の家族』をはじめ、近年世界的に注目を集める韓国映画。本作はまぎれもなくその頂点にある映画である。この衝撃と興奮をぜひ映画館で味わってほしい。(文・柴田悠)
【作品概要】
監督:パク・チャヌク
脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ