ジョニー・グリーンウッドが提示するウエスタン音楽の新機軸
本作のサウンドトラックを手掛けたのはジョニー・グリーンウッド。人気ロックバンド・レディオヘッドのメンバーである。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』など映画音楽の作曲家としても知られる彼だが、本作ではウエスタンを象徴する楽器でもあるバンジョーの使用を控え、代わりにアコースティックギターやチェロ、バイオリンといった弦楽器を使用。繊細で前衛的な音楽に仕立てている。
また、出世作『ピアノ・レッスン』や『ある貴婦人の肖像』でピアノを登場させていたカンピオンだが、本作でも効果的に使用されている。特に印象的なのは、かつて映画館でピアノを弾いていたローズが、パーティーの席でヨハン・シュトラウスの『ラデツキー行進曲』をたどたどしく演奏するシーン。その後、ローズの下手なピアノを聞いたフィルが『ラデツキー行進曲』を即興で演奏し、ローズとフィルの諍いの火が燃え上がる。
なお、ジョニーと『ピアノ・レッスン』で音楽を手掛けたマイケル・ナイマンは共にイギリス出身で、ともに先鋭的な音楽表現で注目を集める音楽家である。本作がオーストラリアとニュージーランドの楽曲であることから、当初オーストラリアの音楽家に作曲を依頼するつもりだったというカンピオン。参考にオーストラリア室内楽団の演奏を聴いたところ、その中の気に入った1曲が、なんとジョニーのものだったという。運命がカンピオンとジョニーを引き合わせたのかもしれない。
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