ホーム » 投稿 » 海外映画 » レビュー » 映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』原作との違いを解説。タイトルに込められた意味とは? <あらすじ 考察 評価 レビュー> » Page 7

ジョニー・グリーンウッドが提示するウエスタン音楽の新機軸

音楽を手掛けたジョニー・グリーンウッド
音楽を手掛けたジョニーグリーンウッドGetty Images

本作のサウンドトラックを手掛けたのはジョニー・グリーンウッド。人気ロックバンド・レディオヘッドのメンバーである。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』など映画音楽の作曲家としても知られる彼だが、本作ではウエスタンを象徴する楽器でもあるバンジョーの使用を控え、代わりにアコースティックギターやチェロ、バイオリンといった弦楽器を使用。繊細で前衛的な音楽に仕立てている。

また、出世作『ピアノ・レッスン』や『ある貴婦人の肖像』でピアノを登場させていたカンピオンだが、本作でも効果的に使用されている。特に印象的なのは、かつて映画館でピアノを弾いていたローズが、パーティーの席でヨハン・シュトラウスの『ラデツキー行進曲』をたどたどしく演奏するシーン。その後、ローズの下手なピアノを聞いたフィルが『ラデツキー行進曲』を即興で演奏し、ローズとフィルの諍いの火が燃え上がる。

なお、ジョニーと『ピアノ・レッスン』で音楽を手掛けたマイケル・ナイマンは共にイギリス出身で、ともに先鋭的な音楽表現で注目を集める音楽家である。本作がオーストラリアとニュージーランドの楽曲であることから、当初オーストラリアの音楽家に作曲を依頼するつもりだったというカンピオン。参考にオーストラリア室内楽団の演奏を聴いたところ、その中の気に入った1曲が、なんとジョニーのものだったという。運命がカンピオンとジョニーを引き合わせたのかもしれない。

【関連記事】
映画『ラ・ラ・ランド』伝説のラストを徹底分析! 珠玉の使用楽曲を詳しく解説<あらすじ 考察 評価 レビュー>
映画『ミッドサマー』不愉快なのに引き込まれる…。前代未聞の“明るいホラー”の魅力を徹底分析<あらすじ 解説 考察 評価>
映画「花束みたいな恋をした」麦と絹の破局の決め手とは? 共感指数100%の恋愛映画<あらすじ 解説 考察 キャスト>

1 2 3 4 5 6 7
error: Content is protected !!