見どころのカンフー! それ以上の”目玉”となるのは…?
管見の限り、こうした作劇パターンは、今までありそうでなかった。父親が子供を虐待するといったステレオタイプな描写ではなく、母親が自身の分身とも言える娘を「ただ、嫌っている」のだ。
とはいえ、本作で描かれるような母と娘の確執は、現実において珍しいものではないだろう。注目すべきは、様々な要素が複雑に絡み合う物語において、ある意味、現代的とも言える母と娘の関係を中心に据えた「ダニエルズ」の時代を読むセンスである。
カンフーアクションも見どころの一つだ。映画界広しといえども、還暦を迎えても尚、これほどまでにキレ味の鋭いアクションを披露する役者はミシェール・ヨーくらいしかいないのではないだろうか。アクションシーンのみならず、日常動作の一つひとつが美しく、目を奪われる。
とはいえ、最大の目玉は、何と言っても「マルチバース(平行世界)」だろう。劇中では、エヴリンの家族全員が幾度となく異なる世界線を移動する(物語内では、それを”ジャンプ”と言う)のだが、そのシステムがまた、面白い。