「被害者はどのような人生を過ごしてきたのか」
75歳のルコント監督が込めたメッセージ
本作には、過激なアクションシーンもなければ、手に汗握るサスペンス演出もない。ミステリーの肝である「フーダニット」(誰が犯罪者なのか)も本作の主眼ではなく、犯人の目星もわりと簡単についてしまう。
では、本作のテーマは一体何なのか。それは、「被害者が一体だれなのか」「若くして死んだ被害者はどのような人生を過ごしてきたのか」ということだろう。そしてこのテーマからは、御年75歳を数える老監督・ルコントの、現代社会に対する静かな批判が垣間見える。
なお、本作の公開に併せて作られたポスタービジュアルは、ミッフィーで知られるデザイナーのディック・ブルーナが装丁を手掛ける「メグレ警視シリーズ」のペーパーバックを参考に制作されたもの。古典的ながらモダンでポップな同シリーズの世界観が巧みに表現されている。こちらも併せて楽しみたい。
(文・柴田悠)
【作品情報】
『メグレと若い女の死』
監督:パトリス・ルコント
原作:ジョルジュ・シムノン
出演:ジェラール・ドパルデュー、ジャド・ラベスト、メラニー・ベルニエ、オーロール・クレマン、アンドレ・ウィルム
2022年|フランス|89分
原題:Il diritto alla felicita
配給:アンプラグド
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