映画史に残る伝説の戦闘シーン〜演出の魅力
本作は、第二次世界大戦における最大の激戦の一つであるノルマンディー上陸作戦を題材に1人の兵士の救出劇を描いた物語。
監督はスティーブン・スピルバーグが務め、主演のジョン・ミラー大尉をトム・ハンクスが、フレデリック・ライアン二等兵をマット・デイモンが演じた。
“ハリウッドの王”とも呼ばれ映画史にさまざまな革新をもたらしてきたスピルバーグだが、本作も例外ではない。アカデミー賞では撮影賞や作品賞など5冠に輝き、史上最高の戦争映画とも称されるほどの作品になっている。
では、本作の一体どこがそこまで革新的なのか。それはひとえに、ドキュメンタリーと見まごうようなリアリティあふれる戦場の描写にある。
例えば、冒頭約20分に及ぶオマハビーチの激戦のシーン。ドイツ占領下の北西ヨーロッパに、アメリカ率いる連合軍が海からの正面突破を図るこのシーンでは、手持ちカメラによる臨場感あふれるカメラワークの中、おびただしい数の兵士の死体が累々と積み重なっていく。
間断なく続く銃撃の中あちこちに肉片が飛び散り海が鮮血に染まっていくさまには、思わず目を覆ってしまう(ちぎれた自分の腕を手にうろうろとふらつく兵士の姿はあまりにショッキングである)。
スピルバーグは本作ではっきりと反戦メッセージを述べているわけではない。しかし、陰惨な兵士たちの死が、千万言に値するメッセージとして心に突き刺さることは間違い無いだろう。