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マグノリア 演出の魅力

カリフォルニア州ロサンゼルスを舞台に、男女9人の“人生を左右する1日”の出来事を追った、3時間超えの群像劇。タイトルは花の名前であり、ロサンゼルスに実在するストリートの名称でもある。

監督のポール・トーマス・アンダーソン(以下、PTA)は撮影当時若干29歳。本作で第50回ベルリン国際映画祭の金熊賞(最高賞)を受賞し、商業的な映画とは一線を画す、独自の作家性を持ったアメリカ映画の新世代の旗手として、不動の地位を築いた。

ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したポール・トーマス・アンダーソン
ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したポールトーマスアンダーソンGetty Images

冒頭のおよそ6分間にも及ぶプロローグでは、実際にあった世にも不思議なエピソードの数々を、ニュース映像を思わせるキレの良いスタイルで描写。どのエピソードも死刑や自殺など「死」をモチーフとしており、その後の展開の壮大な予告編となっている。

登場人物はことごとく一癖も二癖もある奇人・変人であり、人間関係に起因するトラブルを抱えている。PTAは心の底まで射抜くような鋭い眼差しで、登場人物それぞれの葛藤を浮かび上がらせ、長回しを駆使した骨太の演出によって、対立する人物同士の視線と言葉のぶつかり合いを情感たっぷりに描き出す。

プロローグで見られるナレーションを駆使したテンポの良い演出は、後半に入ると鳴りを潜め、役者の芝居をじっと見つめる眼差しの強さが際立つことになる。テレビモニターなどの小道具を活用して、同時並行する複数のドラマを縫い合わせる演出も堂々たるものだ。

大量のカエルが空から降り注ぐラストは、映画史上最も奇想天外なクライマックスの一つ。「カエルの大雨」は醜悪な見かけだが、登場人物たちの悩みを洗い落とすかのように降り注ぎ、3時間近くにも渡って煮え切らない人生模様を見守ってきた観客のフラストレーションを、ものの見事に浄化するのだ。

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