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マグノリア 映像の魅力

映画『マグノリア』の1シーン。左からクレイグ・クヴィンスランド、ウィリアム・H・メルシー、ヘンリー・ギブソン
映画マグノリアの1シーン左からクレイグクヴィンスランドウィリアムHメルシーヘンリーギブソンGetty Images

撮影監督のロバート・エルスウィットは、PTA作品の常連カメラマン。前作『ブギーナイツ』でも効果的に使用されたステディカムカメラによるスムーズな移動撮影は本作でも強いインパクトを放っている。

登場人物がバックステージから舞台に上がるまで、あるいはステージから舞台裏に下がるまでを途切れなく追っていくカメラワークは、登場人物のダークサイドもブライトサイドも丸ごと描こうとするPTA演出と親和性抜群。滑らかなカメラの動きはうっとりするほど美しいのみならず、浮遊する神の視点を想起させ、人生を左右する「偶然」にまつわる本作のストーリーと深い部分でつながっている。

また、人物同士が向かい合って言葉を交わす場面が多いのも本作の特徴だ。向き合う人物同士の会話は、話し手を映したカットと聞き手を映したカットを交互に示す「カットバック」(切り返し)という撮影技法によって表現される。

本作の「カットバック」は、会話の内容に応じてカメラの寄り引きを細かく調整しており、芸が細かい。最大の見せ場である「カエルの大雨」が降り注ぐシーンでは、フロントガラスに衝突したカエルの流血や、天窓を突き破り室内に侵入する様子が綿密に描写されている。

グロテスクになることを恐れず、カエルを抽象的にではなく具体的に描写することで、映像には思わず笑ってしまうほどのリアリティが宿り、シーンが伝えるメッセージも空疎にならず、どっしりとした質量を獲得するのだ。

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