カンヌ騒然…娼婦連続殺人事件の真相とは? 映画『聖地には蜘蛛が巣を張る』は面白い? 忖度なしガチレビュー
text by 山田剛志
アカデミー賞の国際長編映画賞部門に出品され、カンヌ国際映画祭では7分間におよぶスタンディングオベーションを受けた話題作『聖地には蜘蛛が巣を張る』が公開中だ。実際の娼婦連続殺人事件をテーマに、イランのミソジニー(女性蔑視)に鋭く切り込んだ本作のレビューをお届けする。(文・柴田悠)【あらすじ キャスト 考察 解説 評価】
夜な夜な殺されていく娼婦たち…。
イランを震撼させた連続殺人事件の実写化
イスラム教国イランでは、イスラム法により、女性の権利が大きく制限されている。昨年9月、ヒジャブ(髪を隠すスカーフ)の着用をめぐって道徳警察に拘束された女性が急死したことをきっかけに、大規模な反政府デモが起きたことも記憶に新しい。そんなイランを舞台とした作品が、この『聖地には蜘蛛が巣を張る』である。
監督は『ボーダー 二つの世界』で知られる北欧の鬼才アリ・アッバシで、出演はメフディ・バジェスタニとザーラ・アミール・エブラヒミ。第95回アカデミー賞の国際長編映画賞部門にデンマーク代表として出品されたほか、第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、7分間のスタンディングオベーションを受けるなど、大きな話題を呼んだ。
本作のモデルとなったのは、2000年から2001年にかけて聖地マシュハドで起きた殺人鬼サイード・ハナイによる娼婦連続殺人事件。監督のアリは、2002年に制作された事件のドキュメンタリーを鑑賞し、意図せず殺人鬼であるハナイに同情してしまったという。そこで彼は、事件に対する社会の反応やイラン社会に根深く残る女性差別を盛り込み、本作の脚本の執筆を開始した。