社会に果敢に立ち向かうジャーナリストを熱演!
ザーラ・アミール・エブラヒミに注目
「街を浄化する」という犯行声明のもと、娼婦たちを手にかける“スパイダー・キラー”。しかし、一部の市民は彼を英雄視していた。事件を覆い隠そうとする不穏な圧力のもと、女性ジャーナリスト・ラヒミは危険を顧みずに事件に立ち向かう。そしてある夜、彼女は自ら娼婦に扮し、怪しい男の家に潜入。彼女はそこで平凡な男の裏に隠された狂気を目の当たりにする―。
本作の注目は、なんといってもカンヌ国際映画祭で女優賞を受賞したラヒミ役のザーラ・アミール・エブラヒミの演技だろう。男性優位のイラン社会に勇猛果敢に挑む彼女。その姿は、観客の胸を深く打つ。特に自ら娼婦に扮してサイードの家に乗り込む戦慄のシーンは、彼女の演技もあって手に汗握るシーンに仕上がっている。ちなみに彼女は当初キャスティング・ディレクターとして本作に参加。しかしアリは、過去にあらぬスキャンダルでイランの芸能界から追放されたエブラヒミが役にふさわしいと判断し、彼女を抜擢したという。
また、サイードを演じるメフディ・バジェスタニ演技も注目。所帯を持ち、建築現場の作業員として働く凡庸な市民・サイードの信心深さゆえの純粋さと狂気。そして大衆の支持を得て徐々に慢心していく様子を、巧みに表現している。