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「この世の果てまで」の衝撃〜音楽の魅力

歌手のスキータ・ディヴィス
歌手のスキータディヴィスGetty Images

本作は、1960年代という時代設定もあり、当時を代表するオールディーズソングが随所に散りばめられている。

ペトゥラ・クラーク 「恋のダウンタウン」
ゼム 「イッツ・オール・オーバー・ナウ、ベイビー・ブルー」
ママス&パパス 「ゴット・ア・フィーリン」
メリリー・ラッシュ&ザ・ターナバウツ 「朝の天使」
ジェファーソン・エアプレイン 「帰っておくれ」
ザ・バンド 「ザ・ウェイト」
スキータ・デイヴィス 「この世の果てまで」

今回は、この中から特に効果的に使われている場面を2つ紹介しよう。1つ目は、ペトゥラ・クラークの「恋のダウンタウン」(1964年)。これは、スザンナが悲嘆に暮れたポリーを慰めようと部屋の前で弾き語る曲で、歌詞は「淋しい時はダウンタウンに行こう」といった内容のもの。辛い状況でも光を見出そうとする精神病院の患者たちの気持ちを表しており陰鬱な精神病院とは対照的に、伸びやかで明るいメロディが印象的な曲である。

そして、2つ目がスキータ・デイヴィス の「この世の果てまで」。この曲は、父親との関係をリサに責められたデイジーが、浴室で首を吊るシーンでレコードから流れている曲である。スザンナが彼女の遺体を発見するシーンは、おそらく本作で最も衝撃的なシーンだろう。本曲は作詞者のシルビア・ディーが自身の父親の死をテーマに制作した曲であり、本作のテーマとの符合に思わずぞっとしてしまう。

ちなみに、デイジー役のブリタニー・マーフィは、病気のため、2009年に32歳の若さで逝去。スザンナ役のライダーは、デイジーとマーフィを重ねてしまい、いまだに本作が見れないのだという。マーフィのその後の活躍を思えば、なんとも無念である。

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