ベテラン女優の圧倒的な存在感
あらすじからもわかるように、本作を貫くテーマは、ずばり「男女の性」、もっといえば「セックス」である。しかし、本作からは露骨な卑猥さはあまり感じられない。むしろ、江戸時代の春画のように、性そのものをカラッと笑い飛ばしてしまうような快活なパワーに溢れている。
そのパワーの源泉となるのが、オーナー・カティア役のエンフトール・オィドブジャムツの放つ圧倒的な存在感だろう。モンゴルを代表するベテラン女優であり、本作で約30年ぶりに映画に復帰した彼女。酸いも甘いも噛み分けた大人の女性としてサロールにさまざまなアドバイスを授けながらも、時に親子ほども歳が離れたサロールに自らの寂しさを吐露する。その姿は、さながら「大きいともだち」といったところである。
そして、主人公サロールを演じるバヤルツェツェグ・バヤルジャルカルにも注目である。「これまでのモンゴル映画とは違うと直感した」との思いからオーディションを受けたと語る彼女。当初は地味ながらも、徐々におしゃれに変身していく女性の姿を巧みに演じている。