新しいモンゴル映画の幕開け
また、本作では、2022年のウランバートルのラジオチャート年間トップ20入りを果たしたモンゴルの人気シティポップバンド・マグノリアンが話の端々で登場。特にバスの中でサロールと共に歌うシーンでは、バスの照明がパープルなライトに早変わり。映画全編を彩るヒット曲で作品を彩っている。
しかし、モンゴルらしい風景や社会が登場しないわけでは決してない。随所にロシアの郷土料理・ボルシチが登場したり、アダルトグッズの配送をモンゴル当局が取り締まる様が描かれたりと、しっかりとモンゴルの現代社会も描写されている。とりわけ、中盤、サロールとカティヤが大草原の中をドライブするシーンは壮観で、さながらロードムービーのようでもある。
なお、邦題となった「考現学」とは、現代社会の風俗を定点観測で調査・研究し分析する学問のこと。アダルトグッズ・ショップのオーナーやお客さんと接し、さながらフィールドワークのように接する中で、そこで得た経験を自らの人生の糧としていく本作のストーリーにぴったりである。
ジャンチブドルジ・センゲドルジ監督は、本作を制作したきっかけについて、モンゴルでは過剰にタブー視される「性」をテーマとすることで、誰しもが必ず直面する真実として、あえて描きたかったと語っている。監督の挑戦と新しいモンゴル映画の幕開けに拍手を送りたい。
(文・柴田悠)
4月28日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー!
配給:ザジフィルムズ
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