シビれるラストを考察…最恐のヴィランとは？映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー3」の評価は？忖度なしガチレビュー

“銀河一のはみ出しものチーム”の活躍を描く、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー：VOLUME 3』が公開中だ。MCUの中でも独特の人気を得ている同シリーズ。3作目にして完結編となる本作は面白い？ つまらない？ 細部に着目した深掘り考察をお届けする。 （文・灸 怜太）【あらすじ キャスト 解説 考察 声優 評価】 お馴染みのメンバーが大活躍 フェーズ5に突入したMCUの新展開 (c) Marvel Studios 2023 「待望の」というワクワク感と、「ようやく」というホッとした気持ちが折り混ざった微妙な気持ちで公開を迎えた『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー：VOLUME ３』（以下『GotG3』）。邦題が、ちゃんと『VOLUME 3』になってくれていることにも安心するが、ピーター・クイル、ロケット、グルート、ドラックス、ネビュラにマンティスにガモーラ。“銀河一のはみ出しものチーム”と呼ばれるおなじみの面々は、これまでの様々な冒険を経た成長を感じさせつつ、堂々とスクリーンに帰ってきてくれた。 第一作『ガーディアン・オブ・ザ・ギャラクシー』が公開されたのは2014年。盛り上がりを見せていた『マーベル・シネマティック・ユニバース』（以下、MCU）の中でも異色の一作で、その独特のノリに評価が分かれたものの、コアなファンからは熱烈な支持を集め、2017年には第2作が公開。ガーディアンズの面々はサノスとの闘いやアベンジャーズにも深く関わり、銀河を救うために奔走した。 MCUは『アベンジャーズ/エンドゲーム』でクライマックスを迎え、「インフィニティサーガ」と名付けられた一連のストーリーはピリオドを打った。そして新たに「マルチバース・サーガ」が始まっており、現在はフェーズ5に突入している。 【次ページ】 フェーズ5突入で脱落した視聴者も！？ 「ガン以外のGoGはありえない」 本作が“難産”だったワケ (c) Marvel Studios 2023 しかし、この新章に入ってからのMCUでは多くのヒーロー、キャストが卒業し、それに変わるスターがまだ生まれていない状況。それにテレビシリーズなどコンテンツが一気に増えたため、すべてを追いきれずに脱落してしまったという観客も多いのではないだろうか。それでも「ガーディアンズ」だけは観たいというアツいファンも多く、それが本作における「待望」の部分である。 一方、「ようやく」と言いたくなるのは、この作品自体がかなりの難産だったことにある。ジェームズ・ガン監督のスキャンダルによる降板、そして復帰劇や、コロナ禍による混乱などを経たことで、製作・公開が当初の予定よりかなり遅れてしまったのだ。2018年、すでに『GotG3』の撮影準備に入っていたガンだが、過去にTwitterで投稿していた不適切発言を咎められ、親会社のディズニーから解雇されてしまう。この処置に対してファンはもちろん、キャストやスタッフたちからも「ガン以外のGotGはありえない」という声があがり、復帰を願う署名運動なども行われた。 仕事を干された形になったガンは、アメコミ映画のもう一方の雄であるDCエクステンデッドユニバースに引き抜かれ、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』（以下「極スー」）の監督・脚本を務めることになる。この『極スー』も、ガン節の効いた傑作だったが、公開される前に嘆願が届いたのか、解雇から９ヶ月後に『GotG 3』の監督に復帰することが決定。2021年から撮影が始まり、2023年5月に“ようやく“日本公開の運びとなった。 【次ページ】 『スターウォーズ』を超える完成度！？ スペース・オペラとしての興奮度は『スターウォーズ』以上 (c) Marvel Studios 2023 結果的に、少し時間を経てしまった「ガーディアンズ」との再会。若干の不安もあって当然だったが、いい意味で、はみ出し軍団は何も変わっておらず、開始数分で地元の仲間たちと久しぶりに会ったような感覚になれた。 これは、そもそものキャラクターの完成度の賜物。ピーター・クイルも、ガモーラもドラックスも、言いそうなセリフを言いそうなタイミングでつぶやき、らしさ抜群の行動をしてくれる。キャスト陣の演技力に加え、衣装、セット、音楽など、すべての制作陣が「GotGらしさ」をブレずに捉えていることにある。そんなの当たり前のように思えるが、あの『スターウォーズ』サーガですら、この基本的なことを守れずに評価を下げていった。 そして、その堕ちた『スターウォーズ』よりも、スペース・オペラ感がしっかりと漂っているということも特筆したい。壮大な宇宙のスケール、惑星ごとに展開するビジュアル、そこに住む宇宙人たちの生活感。なによりも、自然な形で「多様性」を表現しているのもこのシリーズの特徴だ。 【次ページ】 本作が体現する“無理のない多様性”とは？ “多様性のるつぼ”を実現するジェームズ・ガンの作家性 (c) Marvel Studios 2023 いまディズニーが製作するアニメや、その実写化作品ではポリコレ的な多様性を過敏に意識しているようで、配役に気を使ったり、改変をしては旧来のファンから批判を受けている。それに比べて、「GotG」は最初から多様性のるつぼだ。ガーディアンズのメンバーも、人間、エイリアン、改造サイボーグ、アライグマに木までいる。あえて何も言わなくても、お互いを自然に認め合い、「絆！」「仲間！」などと声高に叫ばなくても、友情や家族愛をしっかり感じさせてくれる。 これは『極スー』にも通底していたジェームズ・ガンならではのテイストで、はぐれものが力を合わせ、仲間のために大きな敵に挑むという、実は王道なストーリーラインに、多様性を自然に表現し、さらにシニカルなギャグやゴア描写を入れて照れ隠しをする。その結果、「観客はなんでこんなところで？」と思うようなシーンで大きな感動を味わうことになる。それには、ジェームズ・ガン自身がトロマ※という映画界の辺境の出身であり、そこで養ったセンスを今も忘れていないということなのだろう。 ※トロマ・エンターテインメント。1974年に設立されたアメリカの映画製作会社。低予算のホラー映画やコメディ映画で知られる。 そんないつものガン節もありながら、今作はいつもよりほんの少し哀愁が効いているのは、最終章であることと、ロケットの秘められた過去が明かされるからだ。 【次ページ】 今回のヴィランとは？ 『アベンジャーズ』のトキメキが蘇るクライマックスに注目 (c) Marvel Studios 2023 瀕死の重傷を負ったロケットの命を救うためにガーディアンズの面々が奮闘するのだが、その合間にロケットの誕生ストーリーが挿入される。まだ幼いベイビー・ロケットの愛らしさはもちろん、そこで出てくる新たな動物キャラたちは哀愁をあざといほどに漂わせ、いつのまにか動物愛護というテーマまで自然に盛り込んでくる。 今回のヴィランはハイ・エボリューショナリーという狂気の科学者なのだが、ロケットに対するフランケンシュタイン・コンプレックス※まで滲ませて、GotGシリーズの核心である家族・親子といったテーマにも絡ませる。 ※人間が、ロボットや人工知能などの被造物に対して抱く、憧れと恐れが入り混じった複雑な感情のこと。 もちろん、大作映画らしいサービスもたっぷり。クライマックスで展開する集団戦アクションは、まさにまばたき禁止。メンバーが、それぞれのキャラに準じた武器と動きを駆使して敵を倒しまくる姿を、めくるめくワンカットで繋いでいく。かつて「アベンジャーズ」で感じたトキメキが蘇ったようで、古き良きMCUの魂をみせてくれる。 ビジュアルも秀逸で、S らしいセンスに満ちながらも、あえて「SFX」と言いたくなるアナログな手触りを残したセットやメイクが愉しい。ヒーローものの定番、横一列になって歩く“スローモーション・ウォーク”は、コスりすぎくらいに出てくるが、どんな状況でもシビれる。 ファンとしては、いつまでもこの続きを見てみたくなるが、このキャストによるGotGシリーズはこれが最終作とアナウンスされているし、なによりもジェームズ・ガンはDCエクステンデッド・ユニバースのトップとして迎え入れられている。だからこそ、映画館でそのフィナーレを見届ける価値がある。「待望」にも「ようやく」にも、きっちり応える、堂々の完結編であることは間違いない。 （文・灸 怜太） 【作品情報】 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー：VOLUME 3』 ■監督:ジェームズ・ガン ■製作:ケヴィン・ファイギ ■出演:クリス・プラット/ブラッドリー・クーパー/ヴィン・ディーゼル/ゾーイ・サ ルダナ/カレン・ギラン/デイヴ・バウティスタ/ポム・クレメンティエフ 他 ■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン ©Marvel Studios 2023 公式サイト 【次ページ】 映画 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー：VOLUME 3』予告編 【予告編】 【最初から読む】 ようやく公開…。その出来はスター・ウォーズ越え!? 映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー：VOLUME ３」忖度なしガチレビュー 【関連記事】 日本で最も人気のマーベル映画は？MCU作品興行収入ベスト5。大ヒットの理由も併せて徹底考察 マーベル史上最もコケた映画は？ MCU 作品興行収入ランキングワースト５。面白いけど物足りない…。爆死の理由を徹底考察 「キャラと声が合ってない…」残念なアベンジャーズキャラクターの日本語吹き替え5選。マーベルファンが許せない吹き替えとは？

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