ハリウッドの異端児による現代の西部劇~演出の魅力
本作は、“ハリウッドの異端児”とも称されたデニス・ホッパーの初監督作品。主演はホッパー自身と『木洩れ日の中に』(1997年)のヘンリー・フォンダで、1969年カンヌ国際映画祭新人監督賞を受賞し、第42回アカデミー賞で助演男優賞と脚本賞にノミネートされるなど高い評価を得た。
本作は、『俺たちに明日はない』(1967年)や『真夜中のカーボーイ』(1969年)とともに、アメリカン・ニューシネマの代表作と目されている。アメリカン・ニューシネマとは、ベトナム戦争に邁進するアメリカに対する若者の反体制的な心情を閉じ込めた映画で、ロックミュージックやヒッピーなどの当時の若者文化が多く描かれる。
主人公・ワイアットとビリーも、そんな時代の空気を背負っている。コカインの密輸で大金を手にした彼らは、ハーレーダビットソンにまたがり、カリフォルニアからルイジアナ州ニューオーリンズへ自由と解放を求めた旅へ出る。ちなみにタイトルはアメリカのスラングで、定職に就かずフラフラしている人、簡単に落とせそうな女性、性的な満足を与えてくれる人、といった意味を持っている。
名前という点で重要なのは、ワイアットとビリーが、西部劇の伝説のヒーローであるワイアット・アープとビリー・ザ・キッドに因んでいるという点である。つまり、ホッパーは当初、馬をバイクに置き換えた「現代の西部劇」として本作を構想していたのである。
制作にあたり、フランスのヌーヴェルヴァーグの影響を受けたとも公言しているホッパー。彼は、古き良きハリウッド映画とヨーロッパ映画を元に、新たなアメリカ映画の歴史を作ろうとしていたのかもしれない。