アースラのモデルはドラァグクイーン
アリエルと恐怖の取引を行う魔女・アースラにも注目したい。演じたのは、映画『ある女流作家の罪と罰』(2018)や、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2016)に出演する、1970年生まれの女優メリッサ・マッカーシー。彼女は、これまでの出演作で、その風変わりな性格と、個性豊かなユーモアセンスを発揮してきた。洋画ファンの中には、明るく、パワフルなコメディリリーフとして認識している人も多いだろう。
メリッサ演じる悪役・アースラは、実写版では、アリエルの父であるトリトン王の妹という設定。邪悪な性格が疎んじられ、トリトンによって海底の王国・アトランティカを追放されてしまうが、それが原因で彼を憎んでおり、海の王の座を奪おうと密かに企んでいる。
他の映画に登場する悪役同様、アースラの性格はひん曲がっている。しかしながら、女優メリッサ・マッカーシーの豊かな表現力によって、アースラというキャラクターにはただ意地悪なだけではなく、ちゃんと人間味が宿っており、キャラクターのバックボーンをもっと知りたいと思わせてくれる。
実のところ、アースラのキャラクター造形には明確なモデルがある。それは男性が派手なメイクと衣装を身にまとい、歌やダンスを披露する“ドラァグクイーン”だ。実写版でアースラのメイクアップを担当したのは、ベテランアーティストのピーター・キング。
これに対し、LGBTQコミュニティでは、ドラァグクイーンが元になっているアースラのメイクアップは、LGBTQアーティストに任せるべきだった、という声を挙げているようだ。もしそうなれば、アースラのキャラクターにはさらに血が通い、主役のアリエルを食うほどの存在感を放っていたかもしれない。