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アニメ版と異なるラストを考察
強調されたアリエルの自立性

女優のハリー・ベイリー
女優のハリーベイリーGetty Images

人間界の王子に心を奪われていたアリエルは、アニメ版同様「3日間だけ人間の姿になれる代わりに、持ち前の美しい声をアースラに差し出す」という契約を結ぶ。

上述したように、実写版『リトル・マーメイド』の物語は、基本的にオリジナルアニメの展開に忠実である。しかし、クライマックス、アースラの最期をめぐる描写には大きな改変がなされている。

アニメ版のラストから見ていこう。アースラは人間界の王子・エリックにより、突撃した難破船の折れた舳先に激突させられて腹を貫かれ、特大の雷に撃たれ、海の底へ沈み滅びる。その後、醜い海洋生物に変身させられていたトリトン王と人魚達は、全員元の姿に戻る。

それに対し、実写版ではアリエルが難破船の舵を取り、アースラに突っ込み、自らの力で彼
女を倒す。その後、アースラがトリトンから奪った魔法の槍・トライデントが海底に沈むが、アリエルは追いかけ、トライデントを掴むと、トリトンは復活する。

アニメ版では他力と天運によってラスボス・アースラが倒される。一方、実写版では主人公・アリエル自身のアクションによってラスボスを倒し、未来が切り拓かれる。

ロブ・マーシャル監督をはじめとする製作陣の意図を正確に推し量ることはできないが、ラストの改変によって強調されているのは、アリエルの自立性であると筆者は感じた。

アニメ版『リトル・マーメイド』ファンにとって、主人公のアリエルが黒人で、ドレッドヘアであることに違和感を持つのは自然な反応だ。しかし、ハリー・ベイリーの圧倒的な歌唱力、メリッサ・マッカーシーの魅力的な悪役像、実写の利点を活かしたダイナミックな映像表現と、本作が実写版ならではの魅力にあふれているのも紛れもない事実である。

自身の力で未来を切り開いていこうとする、今の時代にふさわしい、アップデートされたアリエルの姿を観に、ぜひ映画館に駆け付けてほしい。

(文・吉田健二)

【作品情報】

監督・脚本:ロブ・マーシャル
出演
アリエル:ハリー・ベイリー
エリック王子:ジョナ・ハウアー=キング
セバスチャン(声):ダビード・ディグス
スカットル(声):オークワフィナ
フランダー(声):ジェイコブ・トレンブレイ
トリトン王:ハビエル・バルデム
アースラ:メリッサ・マッカーシー
音楽:アラン・メンケン
編集:ワイアット・スミス
撮影監督:ディオン・ビーブ
製作総指揮:ジェフリー・シルバー
2023年製作/135分/G/アメリカ
原題:The Little Mermaid
配給:ディズニー
翻訳:松浦美奈 映倫:G
公式サイト

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