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『インセプション』との共通点も…? 映画『オッペンハイマー』、クリストファー・ノーランが語る“複雑な結末”とは?

text by 編集部

クリストファー・ノーラン監督による待望の新作映画『オッペンハイマー』が、7月21日より全米で公開される。監督によると、本作のエンディングは、映画『インセプション』との共通点があるという。今回は現地メディアを参考に、ノーラン監督のインタビュー内容の詳細を解説していく。

ノーラン監督の明かす映画『オッペンハイマー』の内容とは?

クリストファー・ノーラン監督
クリストファーノーラン監督Getty Images

映画『インセプション』は、俳優レオナルド・ディカプリオ演じる主人公ドム・コブが、アメリカでの前科を消し、家族のもとへと戻るため、他人にアイデアを植え付ける「インセプション」という技術を駆使した危険なミッションに挑む姿を描く。

一方、映画『オッペンハイマー』は、人類を危険に晒す核兵器の開発に貢献した一人の男の物語を描いている。

カナダニュースサイトScreen Rantによると、米WIREDのインタビューで、ノーラン監督は、映画『オッペンハイマー』と映画『インセプション』の結末が、実は驚くほど似ていると説明しているようだ。

ノーランの言葉に耳を傾けてみよう。

「『インセプション 』」のラストなんて、まさにそうだよね。あの結末にはニヒリスティックな見方がある。でも、彼は前に進み、子供達と一緒にいる。結論の曖昧さは、主人公の感情的な曖昧さではない。観客にとっては知的なものなんだ。面白いことに『インセプション』と『オッペンハイマー』のエンディングには、探求すべき興味深い関係があると思う。『オッペンハイマー』には複雑な結末、感情があるんだ」

『インセプション』と『オッペンハイマー』の共通点には、人間の能力の限界を探ることがある。ノーランは、映画を構築する上で科学的正確さを確保することに並々ならぬ努力を払っている。

映画『インセプション』は、明晰夢と潜在意識の存在を探求し、それがどこまで探求可能なものなのかを考察する。一方で映画『オッペンハイマー』は、原爆の父であるJ・ロバート・オッペンハイマーの生涯を描いており、その内容は、原子力科学に基づいている。

また、『オッペンハイマー』と『インセプション』の類似点は科学的な部分だけでなく、人間の感情の部分にも垣間見える。

どちらの作品も、人間の能力の限界への挑戦と、その背後に埋もれる人間的興味を探求している。原爆投下後、実際のオッペンハイマーは、原爆反対運動に残りの人生を費やした。

映画『インセプション』のラストで主人公コブは、家族と再び会うために自分の行ったミッションが道徳的に正しかったのか、自身の行動に疑問を抱く。『インセプション』におけるコブの内的葛藤は、オッペンハイマーのそれに通じるのではないだろうか。

再びオッペンハイマーの人生に思いを馳せてみる。彼は世界を滅ぼしかねない爆弾を製作することで、世界を救おうとした人物なのだ。

映画『オッペンハイマー』とは、このような複雑性を持った登場人物の物語だ。しかしノーラン監督は既に『インセプション』で、主人公コブの複雑性を描くことに成功している。

そのため、このJ・ロバート・オッペンハイマーという人物の感情も、より真実に近い形で描き出してくれるであろうことが十二分に期待できる。

映画『オッペンハイマー』は、7月21日より全米で公開される。日本公開はまだ未定のようだが、近日中の発表が期待されている。

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