アンジェラ・ユンとの共同作業で産み落とされた珠玉のシーン
―――細部の描写についても伺いたいと思います。序盤に、ザクとキャンディが高層ビルを眺めながら煙草を吸うシーンがありますね。そのシーンで、キャンディは、膝をリズミカルにさするような動きをしています。本作は非常に苦しい状況を描いているわけですが、ところどころで、役者の自由な運動が捉えられており、映画に活き活きとした息吹を与えていると思いました。今申し上げた動きは、アンジェラさんのアドリブだったのでしょうか?
「その動きに関しては、アンジェラのアドリブです。とはいえ、演出がまったく介在しなかったわけでもありません。シナリオには細かい動きまで書き込んではいませんでしたが、彼女とは事前に『キャンディはこういうキャラクターだよね』と、イメージのすり合わせを行っていました。そうしたやり取りによって、『細かい体の動きがあるよね』といった共通認識ができていたのだろうと思います。
一方、偶然が作用した部分もあります。このシーンは前半のほうに撮影したのですが、アンジェラはまだ緊張が抜けていませんでした。また、彼女は喫煙者ではないので、何本か吸っているうちに興奮と緊張が混ざりあって、落ち着かない動きが自然と出たのです。
この場面は、彼女のせいで会社が大変なことになってしまった直後のシーンですが、彼女の落ち着かない動きが、内面の不安や罪に対する後悔を絶妙に表現できていると思い、編集時にカットせず、活かすことにしました」
―――そんな裏側があったのですね。とても素晴らしいシーンでした。
「ありがとうございます」