是枝裕和作品を思わせる傑作、その魅力とは? 映画『星くずの片隅で』深掘りレビュー。香港映画の新しい息吹を徹底考察
text by 島 晃一
香港の人気シンガーソングライター・俳優ルイス・チョンとアジアが誇るトップモデルアンジェラ・ユンがダブル主演を務めた、映画『星くずの片隅で』が公開中だ。今回は、コロナ禍を舞台に、清掃業を営む孤独な男とシングルマザーが織りなすヒューマンドラマのレビューをお届けする。(文・島 晃一)【あらすじキャスト 解説 考察 評価】
コロナ禍を舞台にしたヒューマンドラマ
“アジアのミューズ”アンジェラ・ユンがヒロインを好演
2019年の香港民主化デモに参加した若者たちを描く青春群像劇『少年たちの時代革命』(2021年)では、レックス・レン監督と共同監督を務め、新世代の香港映画の旗手として名前が上がる新鋭、ラム・サム監督。ラム・サム監督の単独監督デビュー作が、この『星くずの片隅で』だ。
清掃会社を個人経営するザクを、人気シンガーソングライターで俳優としても活躍するルイス・チョンが、若いシングルマザーのキャンディを、“アジアのミューズ”とも称されたトップモデルで『宵闇真珠』(2017年)などにも出演したアンジェラ・ユンが演じている。
あらすじは以下の通りだ。舞台は2020年、コロナ禍で香港の街は静まり返っている。清掃会社「ピーターパンクリーニング」を経営する中年男性のザクは、車の修理代や品薄になった洗剤に苦労しながら、店舗や住宅の清掃、消毒作業に追われる毎日を過ごしていた。
リウマチを患っている母(パトラ・アウ)は、ぼやきながらも、息子のことを気にかけている。そんなザクの事務所を、派手なファッションに身を包んだキャンディが訪ねてくる。彼女は幼い娘ジュー(トン・オンナー)と共に暮らすシングルマザーだが、まともな仕事につけず、職を求めていたのだった。
真面目で実直なザクと、苦労しつつも強かに生きてきたキャンディ。彼女は娘のためにまじめに働きはじめる。二人は衝突しながらも、一緒に働くうちに、家族のようでもあり友情のようでもある関係を深めていく。しかし、ある時、ふとした失敗がきっかけで、会社は窮地に立たされる。