登場人物の感情をクラブミュージックで表現
こうした点を踏まえると、あらゆるインフラに侵入するAIとそれに対峙するイーサン=トム・クルーズを描く『デッドレコニング PART ONE』のストーリーからは、既にAIが作った実験的な映画まで存在する現在において、俳優が生身で演じるアクション、ひいては映画というメディアの存在意義を探求する『マーヴェリック』と同じ問いが読み取れる。
この問いに応えるかのように、現在61歳になるトム・クルーズは、本作でも驚異的なスタントに挑戦している。アブダビで砂嵐を再現した戦闘シーン、ローマでのカーチェイス、ノルウェーでの列車を用いたアクション。そして極め付けは、実に1年間ものリハーサル期間を費やした、崖からのバイクジャンプと着地する6秒間の間にパラシュートを開くベースジャンプだ。
また、これまでの流れから少し離れるが、最後に音楽面についても触れておきたい。『フォールアウト』同様、今回も印象的なクラブシーンがある。空間自体は少し非現実的だが、流れている4つ打ち(ダンスミュージックでよく使われるドラムのリズムパターン)の音楽は、実際のクラブとほとんど違和感がない。
さらに、登場人物の感情の変化をクラブミュージックで表現していたのには驚いた。複数の人物が顔を合わせる緊迫した場面では、4つ打ちを用いて微細な感情の機微が表現されており、前作からの進化が窺える。
これまでのシリーズをさらに超える驚くべきシーンを見るたびに、大画面、大音量で映画を見る意義を感じることができるだろう。トム・クルーズをはじめとしたキャスト、スタッフの挑戦をぜひ見届けていただきたい。
(文・島 晃一)
大ヒット上映中
【作品情報】
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
監督・脚本:クリストファー・マッカリー(『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』)
出演:トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、ヴィング・レイムス、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ヴァネッサ・カービー、イーサイ・モラレス、ポム・クレメンティエフ、ヘンリー・ツェニー
全米公開:2023年7月12日
原題:Mission: Impossible – DEAD RECKONING PART ONE
©2023 PARAMOUNT PICTURES.
配給:東和ピクチャーズ
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