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「事実と異なる!」映画『オッペンハイマー』モデルの孫・チャールズ・オッペンハイマーが大激怒.。“毒リンゴ”の場面が物議に

text by 編集部

オッペンハイマーは原子爆弾開発の指導者の役割を果たした人物。そんな彼の活動内容から「原爆の父」と呼ばれる彼の伝記映画『オッペンハイマー』に、事実と異なるシーンが登場するとして、孫チャールズ・オッペンハイマーが怒りをあらわにしたようだ。早速その内容をカナダニュースサイトScreen Rantに基づき、紹介していく。

“毒リンゴで殺害を試みるシーン”が物議
「彼が誰かを殺そうとした記録はどこにもない」

クリストファー・ノーラン監督
クリストファーノーラン監督Getty Images

「原爆の父」と呼ばれるJ・ロバート・オッペンハイマー。彼の人生を描いた伝記映画『オッペンハイマー』は、映画『インセプション』(2010)や、映画『インターステラー』(2014)の製作で名が知れる、映画監督クリストファー・ノーランが、その製作を務めたことで話題の作品だ。

しかし、本作の主人公オッペンハイマーの孫。チャールズ・オッペンハイマーが、映画『オッペンハイマー』の、あるシーンが、事実と異なっている、と異議を唱えている。

その問題シーンは、主人公オッペンハイマーが、ケンブリッジ大学在学中に教授のパトリック・ブラケットを、有害な化学物質を染み込ませた毒リンゴで殺害しようと試みるというシーンだ。

米タイム誌のインタビューで、孫チャールズ・オッペンハイマーが話した内容によれば、このシーンは映画の原作として用いられた、ノンフィクション本『アメリカン・プロメテウス』が記述していた内容であり、実際には“彼が誰かを殺害しようと試みたという証拠はない”。

以下が、彼のコメントの全文だ。

「一番気に入らないのは『アメリカン・プロメテウス』で問題となった、毒リンゴだ。原作『アメリカン・プロメテウス』を、注意深く読むと分かるが、著者はこの行動について”実際に起こったかどうかはわからない”と言っている。彼が誰かを殺そうとした記録はどこにもないのです」

「ロバート・オッペンハイマーの敵も味方も、この内容が真実である、と思った人は、一人もいません。これは本当に深刻な問題で、歴史修正だ。原作『アメリカン・プロメテウス』は、春休みの旅行について書かれた、いくつかの参考文献から、この毒リンゴの話を得たようだが、この話のオリジナル記者は全員、ロバート・オッペンハイマーが何を話していたのかは、知らないと報告しているのです。何よりこの本の著者は、毒リンゴのエピソードへの疑念を認めてさえいるのです」

孫であるチャールズ・オッペンハイマーが言うように、彼の祖父であるロバート・オッペンハイマーが、パトリック・ブラケット教授の殺害を試みたことを証明する、信頼の置ける歴史的記録は存在しないようだ。

しかし、オッペンハイマーが、他人に毒リンゴの話をしたことが主な根拠となり、この話が真実であると広く信じられている。彼の毒リンゴの話は、長年もの間、何度も語られてきたが、実際にそれが起こったかどうかは定かではないのだ。

彼の友人であるジェフリーズ・ワイマンは、オッペンハイマーが話を誇張し、実際にはパトリック・ブラケット教授を病気にするだけの量の毒を使用した可能性を示唆している。

また、別の伝記本『Robert Oppenheimer: A Life Inside the Center(原題)』を書いた、作家レイ・モンクは、毒リンゴの逸話は、オッペンハイマーの生涯の神話化の結果として、発展した話と考えているようだ。

また、孫チャールズは、毒入りリンゴのシーンに異議は唱えているものの、全体としてノーラン監督の映画『オッペンハイマー』は、自身の祖父の人生を、魅力的かつ、リアルに表現していると感じており、一部賞賛しているようだ。

原爆の父と呼ばれたオッペンハイマーが、一体どんな人物であったのか。一人称視点で物語が進められるという本作の視聴で、彼の存在に近づけること間違いないだろう。

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