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『パラサイト 半地下の家族』 配役の評価

韓国を代表する名優、ソン・ガンホ
韓国を代表する名優ソンガンホGetty Images

半地下の家族ことパク家の大黒柱・ギテクに扮するのは、韓国の国民的俳優であるソン・ガンホ。ポン・ジュノとは『殺人の追憶』(2003)、『グエムル-漢江の怪物-』(2006)、『スノーピアサー』(2017)につづく4度目のコラボレーションとなった本作では、寝ぐせで乱れた髪の毛もなんのその、内職である宅配ピザの箱折りを適当にこなし、ランニングシャツ一枚で昼間からビールをあおる落ちこぼれた姿を披露。

絵に描いたような「ダメおやじ」を巧みに演じる一方、運転手としてパク家に取り入る中盤以降は、髪の毛をオールバックでキメ、スーツをビシッと着こなす場面が増える。

ソン・ガンホ演じるギテクの身なりの変化は、クライマックスのパーティーシーンでピークを迎える。誕生日を迎えたパク家の長男・ダソンを驚かせるため、パク氏とともにインディアンのカツラを被ったギテクだったが、地下室の住人・グンセ(パク・ミョンフン)の凶刃によって娘のギジョンが犠牲になってしまう。このシーンはナイフを奪取したギテクが、娘を刺したグンセではなく、その場から逃走しようとする大富豪のパク氏に刃をつきたてて幕を閉じる。

なぜギテクは殺す必要のなかったパク氏を刺したのか。目の前でギジョンが死の危機に瀕しているというのに、我が身と家族のことしか顧みないパク氏に怒りをおぼえたからか、それとも…。複数の解釈が成り立つシーンだが、注目すべきは、ギテクがパク氏にナイフを突きたてる瞬間、突風によってインディアンのカツラが取れ、素面で殺害行為が行われるという点である。

ギテクは、パク氏の前では身だしなみを整え、有能な運転士役を巧みに演じていたわけだが、最後の最後で素顔をみせ、パク氏を刺すにいたった。先述したように、ハッキリとした殺害理由は説明されないため、真実はあくまで観る者の解釈に委ねられている。しかし、刺殺シーンの直前でコスプレがはぎ取られ、素面で殺害が行われるという点を見逃さなければ、ギテクがパク氏に対し“潜在的に殺意を抱いていた”ことははっきりとわかる。

突発的なアクシデントによって顕在化することになった殺意は、貧困に苦しむ下層階級に属する者が、上流階級の人間に対して抱く憎悪に根ざしていることは言うまでもないだろう。

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