『パラサイト 半地下の家族』 映像の評価
撮影監督を務めたホン・ギョンピョは、『母なる証明』(2009)、『スノーピアサー』に続いて、ポン・ジュノとの3度目のタッグ。太陽光や雨、風といった自然現象を豊かに取り入れ、登場人物の感情を引き立たせるのが得意なカメラマンであり、その才能は全編にわたって遺憾なく発揮されている。
とりわけ、大雨によって半地下の住居が水に浸かる、大洪水のシーンは見応え抜群。頭上から降りそそぐ雨の激しさもさることながら、便器をつうじて下から上へ突き上げる水の奔流も迫力たっぷりに描写されており、圧巻という他ない。下から突き上げる水の動きは、パク家の地下室に潜伏しているグンセのこみ上げる怒りと、地上へ飛び出すパワーを表現しており、視覚的なインパクトに富んでいるのみならず、登場人物の感情のうねりや激動する物語の流れと連動している点が素晴らしい。
ラストシーンでは美しい雪が画面を彩る。路上に雪が降り積もる様子を半地下の窓から映し出したカメラはゆっくりと下降し、父・ギテクに向けた「けっして読まれることのない手紙」を黙読するギウの姿を視界におさめる。ギウは裕福になって惨劇の舞台となった豪邸を購入し、地下室で潜伏する父親を救出することを心に誓う。しんしんと降りそそぐ雪は、ギウの確固とした決意を祝福するようであり、ここでも自然描写はしっかりとキャラクターの心象に寄り添っているのだ。