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女同士の絆が深まるあんまん
自分の憧れを千尋に託したリン

『千と千尋の神隠し』(2001)千とリンが食べている饅頭

© 2001 Studio Ghibli・NDDTM
© 2001 Studio GhibliNDDTM

【作品内容】

10歳の少女・千尋は引っ越しの途中、両親とともに古びたトンネル跡地をめぐる。その先には異世界が広がっていて、両親は豚に変えられてしまった。その世界で人間は、八百万の神を迎える銭湯で奉公しなくてはならず、働かない者は魔女である湯婆婆に豚や石炭にされるのだった。豚にされた両親を救うため、千尋は湯屋で働き、少年・ハクや謎の生物・カオナシなど個性豊かなキャラクターたちと困難を乗り越えていく。

本作はベルリン国際映画祭でアニメーションとして初めて金熊賞を受賞し、アカデミー賞でも長編アニメーション賞を受賞。現在までの国内興行収入は史上2位の316億円を叩き出しており、ジブリ作品の中で最大のヒット作になっている。

【注目ポイント】

口調の荒い姉御肌な従業員のリンは、千尋の世話役を押し付けられた。最初は千尋への当たりがキツイ部分もあったが、次第に面倒見のいい先輩へとリンは変わり、千尋も慕うようになる。

そんな中で千尋はオクサレ様と呼ばれる悪臭や汚れがひどい神様を接客することになる。「腐れ神」だと決めつけ、近づかない他の従業員に代わり、千尋は懸命に接客し、リンも薬湯を出すなどサポートをする。千尋はオクサレ様に刺さった棘のようなものを見つけ、従業員らと協力して引き抜くと積年のゴミや汚れが一気に噴き出してきたのだ。実はオクサレ様の正体は河の神であり、河の汚れに苦しんでいたのだ。

その夜、リンはくすねてきた大きなあんまんを千尋と共に食べる。このシーンもふたりの親密さ、そしてオクサレ様の一件によって、以前にも増した絆の深まりを示しているだろう。リンが千尋に言う「こんなところやめてやる。いつか海の向こうの街に行くんだ」という本音からも、リンが千尋を信用していることが伝わるシーンだ。

その後、千尋は銭婆(湯婆婆の双子の姉)と出会い、海の向こうの彼女の住居に行くことになる。その際も手助けをしたのはリンだ。海の向こうという憧れを千尋に託したリン。あんまんは、そんなふたりの絆の原点となる食べ物として、ジブリファンの脳裏に深く刻まれることになった。

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