映画界に新風を巻き起こす…A24映画『インスペクション ここで生きる』考察。スタンリー・キューブリックからの影響も解説
text by 柴田悠
『ミッドサマー』の映画スタジオ・A24が贈る最新作『インスペクション ここで生きる』が、8月4日より公開中だ。ホームレスから海兵隊へと志願した同性愛者の黒人男性を待ち受けていた、壮絶な差別とは? 忖度なしガチレビューをお届けする。(文・柴田悠)【あらすじ キャスト 考察 解説 評価】
気鋭の映画スタジオ・A24が放つ注目作
クィアの監督自身の半生を映画化
89回アカデミー作品賞に輝いた『ムーンライト』(2016年)や、世界中で一大センセーションを巻き起こした新感覚ホラー『ミッドサマー』(2019年)など、革新的な作品を世に放ってきた映画スタジオ・A24(エートゥウェンティフォー)。
本スタジオの最新作となるのが、この『インスペクション ここで生きる』だ。
海兵隊に在職中に映像記録係としてキャリアをスタートさせたエレガンス・ブラットンが、クィアとしての自身の半生を描いた長編デビュー作。
主演は舞台『エイント・トゥー・プラウド』(2019年)に主演し、演劇界のアカデミー賞といわれるトニー賞で2つの部門にノミネートされるという、史上6人目の快挙を成し遂げたジェレミー・ポープが務める。
時は2005年のアメリカ。イラク戦争が長期化する中、ゲイであることから母親に捨てられ、ホームレスとして暮らしていた青年、エリス・フレンチは、生きるために海兵隊に志願する。
しかし、彼を待ち受けていたのは、閉鎖的で因習的な軍特有の差別と憎悪の嵐だった。