監督の実体験を元に描かれた移民一世、二世の葛藤
本作には、移民2世の韓国系アメリカ人としてニューヨークで生まれ育ち、異人種の女性と結婚したピーター・ソーン監督の背景が大きく反映されているそうだ。たしかに、街並みはアメリカ都市部のようだし、火の種族の生活は、アジア系移民の状況を彷彿とさせる。
たとえば、両親たちがエレメント・シティに入国した際は、審査員が彼らの名前をはっきりと発音できない。水の多い環境に居心地の悪さを感じている火のエレメントたちが寄せ集まり、独自のコミュニティを形成している様は、まるで現実のコリアタウンやチャイナタウンのようである。水のエレメントたちが熱くて食べられない火の独特な料理も、その印象を強めている。シタールなどを用いたトーマス・ニューマンの音楽も、東洋をイメージさせるものだ。
アジア系移民の背景は、登場人物たちの価値観にも現れている。水のエレメントであるウェイドの家族たちは個人主義的であり、夢や自分のやりたいこと、得意なことを重視している。それに対して、エンバーと両親は店を継ぐことを当たり前だと思っており、伝統や家に重きを置いていることがわかる。
エンバーが伝統的な価値観や父親と折り合いをつけながら、自らのアイデンティティや夢を模索するのが、本作のテーマの一つだと言えるだろう。