映画『ヒューマン・ボイス』 あらすじ
1 人の女が、元恋人のスーツケースの横で、ただ時が過ぎるのを待っている。(恋人はスーツケースを取りに来るはずが、結局姿を現さない)また、そこには、主人に捨てられたことをまだ理解していない落ち着きのない犬がいる。
捨てられた人間と犬。女は待ち続ける 3 日間、1 度しか外出しない。そして、その外出で斧と缶入りのガソリンを買ってくる。女は無力感に苛まれたり、絶望したり、そして理性を失ったりと、様々な感情を体験する。
まるでパーティーにでも行くかのようにおしゃれをし、ベランダから飛び降りることを考える。そこに元恋人から電話が入る。だが数種類の薬を 13 錠も飲んだ女は、意識を失い電話に出られない。犬に顔をなめられ、ようやく目を覚ます。女は水でシャワーを浴び、暗い心を象徴するような濃いブラックコーヒーを1杯飲んで蘇ったところで、再び電話が鳴り、今度は電話に出る。
聞こえてくるのは女の声のみで、恋人の声は一切、聞こえない。女は、最初は平静を装っているが、男の偽善と意地の悪さに爆発寸前状態になる。本作は、まさしく奈落の底にいる主人公を描いているが、そのテーマは、欲望についての道徳的な教訓である。生きることや愛することの冒険にリスクはつきものだ。
主人公のモノローグからは、苦痛がにじみ出ている。冒頭でも述べたように、主人を喪失した人間と動物という2つの生き物の混乱と苦悩の物語なのである。
『ヒューマン・ボイス』は、11/3(祝・木)ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamura ル・シネマ、新宿シネマカリテ他公開
【作品情報】
『ヒューマン・ボイス』
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
製作:アグスティン・アルモドバル、エステル・ガルシア
オリジナルスコア:アルベルト・イグレシアス
撮影監督:ホセ・ルイス・アルカイネ
編集:テレサ・フォント
美術監督:アンチョン・ゴメス
衣装:ソニア・グランデ
メイク:アナ・ロザーノ
ヘアスタイリスト:マノロ・ガルシア
音響:セルヒオ・ビュルマン
2020/スペイン/英語/30 分/カラー/5.1ch/ドルビーデジタル/アメリカンビスタ
原題:THE HUMAN VOICE
字幕翻訳:松浦美奈
配給・宣伝:キノフィルムズ
提供:木下グループ
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