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主人公ジェイはリム・カーワイの分身!?

(C)cinemadrifters
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―――本作には、リム監督の過去作『どこでもない、ここしかない』(2018)の映像が随所に出てきますよね。例えば、尚玄さん演じるジェイとアデラさん演じるエヴァが出会うシーンでは、2人がPCで同作を見る場面が出てきます。その後、2人は『いつか、どこかで』(2021)を撮るわけですが、リム監督とジェイが重なって見える瞬間がありますね。

リム「自分の分身というイメージはあまり想定していなかったですね。ただ、そういう見方もできると思います」

―――私としてはそこが面白かったです。本作をドキュメントとしてみると、アデラさんは本名で、尚玄さんはリム・カーワイとして登場するのが筋だと思うんですが、それぞれ「エヴァ」「ジェイ」という架空の人物を演じられています。そういった「ねじれ」がとても興味深いなと。

リム「確かに、僕の前の作品を観てくれている方は、そういうところを面白がってくれるんですよね。だから、本作を単体で見るよりも、僕の他の作品と併せて観てくれるとより楽しめるのかもしれません。

ただ、映画を撮っていると、“なぜ彼があそこで映画を撮ろうとするか”や“どんな映画を撮ってきたか”を作中で見せないといけないですよね。で、作中で映画監督を登場させるとなると、自分が撮った映画を通して、自分がなぜバルカン半島を舞台に映画を撮ってきたのかを見せるのが一番手っ取り早い。

それから、アデラさんのように、かつて僕の映画に出演してくれた人に似た役を演じさせることで、自分のフィルモグラフィをもう一度なぞることができる。ただ、バルカン半島の魅力に取り憑かれた映画監督という設定だと一番分かりやすいというだけの話なので、厳密にはぼくの分身というわけではないですね」

―――尚玄さんは、ジェイを架空の人物として演じていたんですか。

尚玄「そうですね。ただ僕自身は、リムが道中このようにして女性と出会ったんだろうなとか、過去をあれこれ想像しながら演じました。なので、僕としても分身という解釈は成り立つかなと」

リム「まあ、それがこの映画の面白いところでもありますよね。『あなたの微笑み』でもそうですが、どこまでが虚構でどこからが現実か分からないところに映画の面白さが潜んでいると思います」

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