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「失敗しながら答えが見つかることもある」
俳優から信頼される三宅監督の現場とは

©︎瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会
©︎瀬尾まいこ2024夜明けのすべて製作委員会

―――松村北斗さんは、昨年公開された映画『キリエのうた』(2023/岩井俊二監督)、ドラマ『ノッキオン・ロックドドア』(2023/EX)など、俳優としての評価が高まっていますが、一緒に仕事をしてどうでしたか?

「松村さんは事前にパニック障害について調べて準備をしっかり整えてきてくれました。本当にプロフェッショナルで、驚くほど真剣に役に取り組んでくれて。とはいえ、のめり込みすぎて視野が狭くなることもなく、ユーモアもあり、本当にバランス感覚がいいですね。

こうお話ししていると、作品への取り組み方や撮影現場でのあり方など、上白石さんと似ているというか、互いに高め合っていて、お二人と同時に仕事をしていて、本当に心地よかったです」

―――先ほど上白石さんには自分の手の内をすべて見せたとおっしゃっていましたが、松村さんにもそのように向き合ったのでしょうか?

「そうですね。松村さんとも初めて仕事をしますから、まずは僕自身、三宅唱という人間を知ってもらおうとその説明から入りました。

撮影では、例えばパニック障害の発作のシーンで、僕は『もっともっと』みたいなことは求めず、むしろブレーキをかけることが自分の仕事だと伝えました。それから、悩んだときは相談してほしいとも。答えは見つからないかもしれないけど、一緒に考えることはできる。合間のおしゃべりで答えが見つかることもありますし、実際にやってみて、失敗しながら答えが見つかることもある。

失敗して、また考えて、一緒に試行錯誤を重ねていくのが僕のものづくりのやり方です。悩んでいることを隠して進んでいくことは、僕の現場ではないですね。だから松村さんにも全てをさらけ出していました」

―――上白石さんの舞台を見たりしていた話がありましたが、松村さんはSixTONESというアイドルグループのメンバーでもあります。事前に彼らのライブを見るなど松村北斗さんについてリサーチされたのでしょうか?

「SixTONESのコンサートを見にいったのは、撮影の後ですね。彼らはYoutubeやったり、ラジオのパーソナリティをやったりしているので、そういうのを見たり聴いたりしましたが、SixTONESの松村北斗ではなく、俳優・松村北斗との仕事なので、そこまで事前に情報入れず、直接お会いしてからの自分の感覚を大切にしました」

―――ちなみに松村さんと上白石さんは、映画についてどの様な感想を監督におっしゃっていましたか?

「初号試写のときに松村さんと上白石さんと何故か『3人で並んで観ましょう』ということになり、2人から『監督は真ん中に入って』と言われましたが、主演の2人に挟まれて観るのは嫌だと言って(笑)、同じ列の別の席で観ました。終演後、2人が『この映画大好き!』と言ってくれたので、うれしかったですね」

―――ちなみに松村北斗さんと上白石萌音さんとまた映画を撮るとしたら?

「2人は今以上に日本を代表する俳優になっていくと思うのですが、中年になったとき、どういう感じに年を重ねているのか。栗田科学の栗田和夫(光石研)さんたちのようなベテランの世代になった山添くんと藤沢さんを観てみたいし、一緒に仕事したいですね。僕が元気なおじいちゃんだったら(笑)」

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