強欲な証券エリートたちに喧嘩を売る
経済は崩壊し、失業者は激増。学生も奨学金を返せる見込みが立たず、ただただ呆然とするしかなかった。ギル自身も、妹をコロナによって失っていた。
一方で、ヘッジファンドに身を置き、ウォール街に跋扈するどこまでも強欲な証券エリートたちは、同社の株を空売りし右肩下がりのチャートを見て、ほくそ笑んでいた。
そんな彼らに敢然とケンカを売ったのがギルだ。赤いハチマキに猫のTシャツ姿で、ハンドルネーム“ローリング・キティ”を名乗り、ゲームストップ社の株式を大量保有していることをYouTubeで発表し、「世間は同社の本当の企業価値を見誤っている」とブチ上げたのだ。
彼の告白はSNSやネット掲示板を通じて拡散され、多くの若者が同調し、同社の株を買い始める。そして同時に、株価も上昇に転じる。
当初は、ネット民のみで盛り上がっていただけだったが、2倍、3倍、10倍…となっていくと、ウォール街の人々も無視できなくなっていく。
同社の株を買っているのは無力な小口の個人投資家ばかりだ。彼ら一人ひとりの含み益はわずかなものだが、レバレッジをかけて株取引をしているエリートたちは、わずかな下落でも、億単位の損失を出すことになるからだ。
そして、そのムーブメントは全米に飛び火し、全国ネットのテレビニュースでも取り上げられ、ギルは一躍、有名人となる。家の前には支持者やマスコミが殺到、一躍“時の人”となる。