近未来の日本を予見したかのようなストーリー
その後、BANされていたYouTubeチャンネルが復活する。そこでギルはゲームストップ社の株を売っているどことか買い増していることを告白する。そして再び、同社の株価は沸騰していく。
結果、ヘッジファンド側は莫大な損失を出し、ギルを信じて付いてきた個人投資家たちは、ウォール街をギャフンと言わせることになる。
鑑賞後、ゲームストップ社の株価を確認すると、この騒動の最中、最高80ドルを超えていた株価が13ドル程度に落ち着いている。それは、ブームが去った後、同社の本当の企業価値を現した数字なのだろう。
この事件は、アメリカ証券取引委員会にも影響を与え、市場の動きと個人投資家の行動を調査し始めるきっかけとなった。
市場操縦や不正取引の疑いがないかどうか、また、個人投資家の行動が市場の健全性に影響を与えているかを調査することとなった。
一方で、個人投資家の行動は、ヘッジファンドなどに牛耳られていた市場の透明性と公正性を向上させるものとされた。しかし他方では、SNSを駆使する個人投資家の行動が、株価操作など市場の安定性を損なう可能性もあるとの懸念も生じている。
この事件は、株式投資が一般化している米国ならではの事件であり、現在の日本にそのまま当てはめることは難しいだろう。
しかしながら、本作で描かれている経済格差は、今の日本でも現実に起きていることだ。筆者の目には近未来の日本の姿を予見しているような作品に映った。
(文・寺島武志)
【作品概要】
タイトル:『ダム・マネー ウォール街を狙え!』
監督:クレイグ・ギレスピー(『Mr.ウッドコック 史上最悪の体育教師』、『ラースと、その彼女』、『フライトナイト 恐怖の夜』、『ミリオンダラー・アーム』、『ザ・ブリザード』、『クルエラ』、『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』)
原題:DUMB MONEY
脚本:ローレン・シューカー・ブラム、レベッカ・アンジェロ
原作:ベン・メズリック
製作:アーロン・ライダー、テディ・シュワルツマン、クレイグ・ギレスピー
配給:キノフィルムズ
出演:ポール・ダノ、ピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレ―ラ、ニック・オファーマン、アンソニー・ラモス、セバスチャン・スタン、シャイリーン・ウッドリー、セス・ローゲン
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2023/アメリカ/英語/105分/カラー/5.1ch/ドルビーデジタル/スコープ/G/字幕翻訳:橋本裕充
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