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パルプ・フィクション 配役の寸評

主役の1人である殺し屋・ヴィンセントを演じるのはジョン・トラボルタ。1977年公開の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』で一躍スターダムを駆け上がって以降、低迷を続けていたが、本作で見事に復活。肩の力が抜けた芝居によって「短気でニヒルな殺し屋」というキャラクターにミステリアスなムードをまとわせることに成功。ボスの情婦であるミアの虜になるまいと、鏡に向かって自身の理性に問いかける場面でも一貫してクールな芝居に徹することで、観る者にオフビートな笑いをもたらす。

ミア役のユマ・サーマンは、後に『キル・ビル』二部作に主演する、タランティーノ映画のミューズとも言える存在。本作では人目を引く美貌を持ちながら重度のコカイン中毒者というぶっ飛んだ役柄を体を張って熱演。大量のヘロインを摂取し、鼻血を出して卒倒する場面もさることながら、レストランのトイレで人目も憚らずコカインを吸い込み、フロアでヴィンセントとダンスに興じるシーンは、本作のハイライトの一つである。

ヴィンセントの相棒・ジュールスにはサミュエル・L・ジャクソンが扮し、「悟りを開いた殺し屋」という、これまたクセのある役柄を貫禄たっぷりに演じている。チンピラ強盗犯に銃を向け、聖書のデタラメな引用を語り聞かせるラストシーンは設定だけ聞くと荒唐無稽だが、サミュエル・L・ジャクソンの落ち着き払った芝居によって、静けさに満ちた、感動的な名場面となっている。

落ち目のボクサー・ブッチを演じるブルース・ウィリスは、代表作『ダイ・ハード』を彷彿とさせる、血まみれ&汗まみれの熱い演技を披露。血に染まった白シャツとジーパンという出立ちで日本刀を振りかざす姿はいかにもミスマッチだが、古今東西のカルチャーがごった煮的に放り込まれた作品風土であるため、違和感なく観られてしまうから不思議だ。

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