ブギーナイツ 配役の魅力
フランソワ・トリュフォー監督作品『アメリカの夜』と並び称される、バックステージものの群像劇として名高い本作には、メインキャストだけでも10名を超える役者がしのぎを削り、思い思いに個性を発揮している。
本作で映画初主演を飾ったマーク・ウォールバーグは、キャリア初期にはカルバン・クラインの下着モデルを務めており、恵まれた肉体とこなれたポージングで不世出のポルノスターを快演。
PTAがリスペクトを表明するロバート・アルトマンが監督した『ショートカッツ』(1993)で注目を浴びたジュリアン・ムーアは、心に傷を負ったポルノ女優・アンバーを体当たりで演じ、初のアカデミー賞候補となった。その後の躍進はよく知られているとおりだ。
他にも、ローラーガール役のヘザー・グラハム、エディの仲間の1人であるバックを演じたドン・チードルは本作を足がかりにハリウッドで不動の地位を築き、後のキャリアを左右する値千金の芝居を披露している。
エディと並ぶもう1人の主人公、映画監督のジャックに扮するのは、1960年代から80年代にかけて活躍した俳優・バート・レイノルズだ。70年代には売れっ子だったジャックが80年代に入るにつれて衰退していく過程には、レイノルズの実人生が重ねられており、観る者に深い味わいをもたらす。レイノルズは本作で復活を果たし、アカデミー賞助演男優賞にノミネートされた。
映画スタッフの1人であり、エディに密かな恋心を抱く青年スコティを演じたフィリップ・シーモア・ホフマン、妻の浮気に苦悩し凶行に走る助監督役のウィリアム・H・メイシーをはじめ、次作『マグノアリア』にも出演するキャストが軒並み顔をそろえ、安定感のある芝居をみせる。
また、前作『ハードエイト』に主演したジョン・C・ライリーはポルノ男優役として、フィリップ・ベイカー・ホールはポルノ業界の衰退を予言する資産家役として、それぞれ重要な役柄を任されている。