ホーム » 投稿 » 海外映画 » 劇場公開作品 » 「酸性雨が鏡になっているんだ」映画『ACIDE/アシッド』ジュスト・フィリッポ監督インタビュー。異色のサバイバル・スリラーを語る » Page 3

「酸性雨が鏡になっているんだ」
観客一人ひとりが自己と向き合う映画に

© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS – 2023

© BONNE PIOCHE CINÉMA, PATHÉ FILMS, FRANCE 3 CINEMA, CANÉO FILMS – 2023

——フランスではどのような反応がありましたか?「黄色いベスト運動」かなり批判の的にされた事件でしたが。

「うん。観るのは辛かったと思うよ。本作をパリ市庁舎で上映したことがあったんだ。場所が場所だから年齢、性別問わず沢山のお客さんが来てくれたんだけどね。

ある高齢者の女性が手を上げて「私この映画、大嫌い」と言ってきたんだよ。すると今度は女の子が「これは私たちのことを描いている映画だよ! 大好き!」と反対意見を叫んだんだ。

映画は、沢山の人に観て貰うことが大切だと思う。たとえば“水”をテーマにしただけでも、“洪水”や“干ばつ”といった様々な描き方があって、そしてその反応も様々。映画は本当に楽しい芸術だと思うよ」

——その点『ACIDE/アシッド』は鏡のような映画ですね。自分を観る映画だと思いました。

「そのとおりだよ。酸性雨が鏡になっているんだ。心理学でいう「ミラー現象」ていうんだけど、観客が観客だけとしてではなく、映画の中の出来事を体験して、自分としてどう捉えるか? 自分ならどうするのか? 映画の余白の部分を埋めることで、深く楽しんでほしいな」

【取材を終えて】

ハリウッド的なディザスター映画の多くが典型的な家族愛を賛美している。その点、『ACIDE/アシッド』は一筋縄ではいかない映画だ。

災害に直面したとき、家族が本当に愛で結ばれ、友人や隣人が協力しあって乗り切っていけるのか? “良い家族”とはなんだ? “善”とはなんだ?  天から降り注ぐ災害を“鏡”に模し、貴方自身を映し出す。自分自身を見つめるディザスター映画が『ACIDE/アシッド』なのだ。

(取材・文:ナマニク)

【作品情報】

監督・脚本:ジュスト・フィリッポ
ギヨーム・カネ、レティシア・ドッシュ、ペイシェンス・ミュンヘンバッハ
2023年/フランス/100分/フランス語/4Kシネスコ/カラー/5.1ch/原題:ACIDE/日本語字幕:星加久実/配給:ロングライド
8月30日(金)TOHOシネマズ シャンテ他全国公開
公式サイト

【関連記事】
「イム・シワンは素晴らしい演技で応えてくれた」実話ベースの映画『ボストン1947』カン・ ジェギュ監督インタビュー
「27年間、僕の中には小さな『箱男』がずっと住んでいました」映画『箱男』主演・永瀬正敏、単独インタビュー
「歌舞伎町は意外と人情がある」佐々木チワワが語る、ドラマ『新宿野戦病院』の魅力と歌舞伎町のリアルとは? 単独インタビュー

1 2 3
error: Content is protected !!