劇中でフィルムカメラが使われている理由は? 映画『シビル・ウォー』の細部に宿る魅力を考察&評価【映画と本のモンタージュ】
国内興行収入で初登場1位を記録した、映画『シビル・ウォー アメリカ最後の日』。本作は、今のアメリカで内戦が起こった場合の、ifの世界を描くディストピアアクション。作品の魅力を紐解きながら、併せて読みたい1冊を紹介する。(文・すずきたけし)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:すずきたけし】
ライター。『本の雑誌』、文春オンライン、ダ・ヴィンチweb、リアルサウンドブックにブックレビューやインタビューを寄稿。元書店員。書店と併設のミニシアターの運営などを経て現在に至る。
「分断」の先にある「内戦」
『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を観た。
現代のアメリカを舞台に連邦政府から離脱したテキサス・カリフォルニア同盟の西部勢力(WesternFoces)と政府軍との内戦を描く本作は、フォトジャーナリストのリー・スミス(キルステン・ダンスト)と記者のジョエル(ワグネル・モウラ)、若手カメラマンのジェシー(ケイリ ・スピーニー)、そしてリーの恩師であるベテラン記者サミー(ス―ティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン)たちジャーナリストの4人が、ファシズム政権と化した大統領へのインタビューをするべくニューヨークからワシントンD.C.へ向かうロードムービーだ。
アメリカの内戦といえば「南北戦争」(1861~1865)があるが、後にも先にもアメリカで唯一の内戦であった南北戦争を指して本国では“The Civl War”と呼ばれる。
北部のアメリカ合衆国と南部のアメリカ連合国によるこの内戦は南部の奴隷制や、工業と農業といった社会・経済体制による南北対立からの「分断」が原因であった。しかし本作『シビル・ウォー』で描かれる内戦の原因は少々複雑だ。
現実の今のアメリカにおいて「分断」といえばリベラルvs保守、民主党vs共和党といった党派性による対立構造と、トランプが大統領に就任した2017年に起きたシャーロッツヴィル(本作にも名前があがる)での極右集会と反対デモが衝突した事件、さらに2021年に合衆国議会議事堂襲撃事件などから現在でも「分断」とその先の「内戦」という言葉が顕在化している。
しかし本作は現代アメリカの内戦を描きながらも、上のような社会・文化の対立構造をそのまま描いてはいない。